あまりにも稚拙!内閣不信任決議案

 野党が内閣不信任案を提出した。どう考えても、非常に間の抜けた戦略に思える。自民もひどいが、またそれとは別の意味で野党もひどい。政治手法が稚拙、と言うのが正しいだろうか。
 案の定、本会議であっさり否決された。多分それで終わり。2~3日前まで、自民党の幹事長は、不信任決議案が提出されたら、首相に解散を進言すると言っていたやに記憶するが、いざその段になると、それはあり得ないという風に豹変した。まぁ、至極当たり前であろう。コロナのドタバタが続いている上、オリンピックまで40日あまりという時に、解散=総選挙を出来るはずがない。よくわきまえている。数日前の「進言」云々は、単に野党を牽制するなり、おびき出すなりするための策略であった。
 野党の何が悪いかというと、まず第一に、コロナ対策を最大の大義名分にしたことである。ことこの問題に関して、自民党ではなく、野党がやれば上手くいっただろうとは思えない。そもそも、コロナ対策で明確な争点なんか存在しない。せいぜい、緊急事態宣言を出すタイミングや、休業補償をどうするかといったあたりだろうが、結果論的な要素もあり、実務的な問題もあり、理詰めで考えてどのやり方が正しいかを見極めることはできない。ワクチン接種を進めることは当然として、それはそもそも政治的であるよりは実務的な問題である。自民党だって、下がり傾向の内閣支持率に対する危機感から、なりふり構わず努力しているのであって、野党にそれ以上のことができるような気はしない。少なくとも、「野党ならできる」という確信を持つための材料はない。
 内閣不信任案を出すなら、争点は、現在国会で成立しそうな重要土地法案であり、学術会議の任命拒否問題でなければならない。だが、さすがの野党も、そんな高度な(=今の生活に直接影響しない)問題に国民が強い問題意識を持てないことが分かっているから、「コロナ」にすがったのだろう。それでも、そのような筋を外した変な駆け引きが、なおのこと野党の立場を分かりにくくさせて墓穴を掘るのである。
 与党が否決しておしまいにしようとした場合、内閣不信任案に意味があるのは、圧倒的な国民が与党に反感を感じていて、それを提出したこと自体に喝采を送る状態でなければならない。もちろん、現在は全くそういう状況ではない。「あいつら何やってんだ?」がオチである。
 上にも書いたとおり、コロナとオリンピックを考えると、実際にはあり得ないのだが、与党が「解散」という奥の手を出した場合、総選挙となる。これについて、まず第一に、野党にはその準備ができているように見えない。いくら内閣不信任案で「維新」以外一致できたとしても、候補者擁立、そのための政策のすり合わせが十分できているようには見えず、準備はほとんど今からとなる。それでいて、あの強欲でしたたかな自民党に勝てるわけがない。しかも、内閣支持率が多少下がっているとは言っても、自民党の支持率はそれほど下がっていないのである。第2に、自民党は選挙ができない論理を逆に使うことが考えられる。すなわち、自ら解散しておきながら、「コロナやオリンピックで大変なこの時期に、内閣不信任だの総選挙だのとは本来言っていられないでしょ」と、国民の危機感を刺激し、不満を煽るやり方だ。戦争のような「国家の一大事」によく用いられる手法である。
 いくらオリンピックの開催に懐疑的・批判的な人がいるとはいっても、各種世論調査を見てみると、圧倒的多数の国民が「中止」を願っているわけではない。しかも、最近感染状況が落ち着いてきたこともあって、「中止」と考えている人は徐々に減っているようにさえ見える。
 こう考えてくると、選挙になった時に野党が勝てる(数を大きく伸ばせる)とは思えない。つまり、どこからどのように考えても意味のない、むしろ野党にとってマイナスとなる内閣不信任案なのである。何を考えているのだか・・・。