酒の値段

 東京で4回目となる緊急事態宣言が出た。自粛を要請される飲食店は本当に大変だろうな、と思う。そんな中で気になるのは、「酒類の提供」が標的にされていること、飲食店の側でも、「酒を出せなければ経営が成り立たない」と言っていることだ。
 と言うのも、私は常々、いや益々、飲食店で飲む酒の値段が高すぎると思うようになっているからである。
 私の限られた経験ではあるが、日本ほど、酒屋で買って飲む酒と飲食店で飲む酒の値段が違う国というのはないのではないか。昔から了解事項なのかも知れないが、1合徳利に1合入っているということもない。しかも、たびたび外国人とトラブルの原因となる「お通し」=飲酒のための基本料金というのが存在する。
 私が以前から気に入っていた焼き鳥屋がある。大衆的なチェーン店なのだが、とにかく料理が安くて美味い。ところが、最近、徳利がずいぶん小さくなった。メニューには1合瓶の写真が載っているのに、出てくるのは小さな徳利に入った状態だ。おそらく、7勺も入っていないであろう。料理は安くても、酒代がかさみ、最後に支払う金額は決して安くない。上手くやられた、という気がして、足が遠のいている。
 かなり前の話だが、石巻市内の某中華料理店で、確か1人4000円のコースを4人分頼み、多少の(←多少の、です)お酒を飲んで29000円かかったことがある。酒代が13000円ということになる。ビールと紹興酒で、店で買えばせいぜい3000円分くらいの酒だ。
 私はおかしいと思う。料理は手間がかかっているし、味が料理人の技術に左右される。技術料であり手間賃だ。一方、酒は酒屋から買ってきた酒を小分けにして、冷やすか暖めるかして出すだけだ。どう考えても、酒の利ざやを小さくし、料理の利ざやを大きくするのが正しいやり方なのではあるまいか?
 そのようにしていれば、酒類の提供を停止することを求められてもダメージは小さい。酒類の提供を停止することで、客足そのものが遠のくといった問題はあるかも知れない。一方、酒代の高さが客を遠ざけている部分もあるようにも思う。コロナ禍による酒類の提供自粛→苦境は、自分たちの首を絞めた部分もありはしないか?
 物の値段を決めるのは難しい。ただ、値段=原材料費+手間賃である以上、手間のかからないものは安く、手間のかかるものは高く、が原則であるべきだ。労働の価値がそうして評価された方が、店の人たちにとっても幸せだろう。それは外野の考えであって、実際にはそうできない何かの事情があるのだろうか?とにかく、酒は高く付く。