我が家の近くの風力発電機

 環境問題、特に温暖化が社会問題化して以降、「再生可能エネルギー」という言葉を耳にすることが多い。太陽光発電であったり、風力発電であったり・・・である。私は、基本的に全てごまかしだろうと思っている。それらの発電装置の製造、取り付け、メインテナンス、処分に費やされる再生不可能エネルギーと、太陽光発電によって得られるエネルギーとの差し引きが分からない限り、それが本当に地球環境にいいかどうかなんて分からない。そして、そのメリットがない、もしくは極めて小さい証拠として、そもそもそんなデータが公表されていない、という問題がある。後ろめたいところがないのであれば、そんなデータは、いかにも自慢気に公開されるはずだ。
 我が家の東方、日和大橋を渡って対岸、魚町に、さほど大きくない風力発電機があって、プロペラが回転しているのを我が家から眺めることができる。誰が設置したのか分からない。まして、どれくらいの発電能力を持つかも分からない。どうしてこんな所に?なんとなく気になるなぁ、と思っていたところ、今週日曜日の朝日新聞宮城県内版に、この発電機に関するけっこう大きな記事が出た。原さんという記者、町中の平坦地に風力発電機が回っているのが気になっていたらしい。同じような人がいるものだ。
 アーバンプラントという廃棄物処理会社の所有物らしい。2018年2月設置のアイルランド製。羽軸までの高さは21m、羽根の直径は13.1m、定格出力19.6Kw。売電益を期待して建てたらしい。設置費用は約3000万円だが、国・県からの補助が1000万円あったので、会社の持ち出しは約2000万円である。売電による収入は、月に15~20万円ということだ(売電契約が1kwhあたりいくらかは書かれていない)。設置以来不具合が相次ぎ、なかなか発電量が増えなかったが、昨年11月に部品を取り替えてから、ようやく順調に作動するようになったらしい。
 設置費用がなぜ3000万円もかかるかは分からないが、これは相当程度、この風車を作ったり輸送したりした、つまりは費やされた再生不可能エネルギーの量を反映しているだろう。ほどよく風が吹き、毎月売れた電気が20万円分だったとしても、会社が投じた設置費用を回収するには8.3年かかることになる(2000万÷(20万円×12ヶ月))。しかし、国や県からの補助も設置費用のうちだし、15万円分しか売電できない月もあるわけだから、最悪の場合として、3000万円÷(15万円×12ヶ月)と考えると、16.7年かかることになる。最終的には解体、処分せざるを得ないはずで、それにもまた相当額がかかることになるはずだから、実際には、投資を回収するための期間はそれらよりも長くなる。売電価格が、政策的に高く設定されていたらなおのこと、実質的な資本回収には時間がかかり、エネルギー収支で考えても、有利ではないはずだ。
 石巻市では、我が家からは見えないが、市街地の北郊、上品山(じょうぼんさん・466m)という頂上部分が牧場になっている山に、巨大な10基ほどの風力発電機が回っている。これまた設置に膨大な再生不可能エネルギーを費やしているはずだ。山の上で、風が強いのは発電に有利だが、代わりに耐用年数は短くなるはずで、そのエネルギー収支の悪さは、魚町の小型風力発電機の比ではないと思われる。
 それでも、くるくる回る風車を見ながら、石巻でも再生可能エネルギーの利用が進んでいるなぁ、温暖化への取り組みは着実に進んでいる、などと考えている人がたくさんいるとしたら、まったく羨ましい限りの話である。