蒼鷹丸とI・D・F

 昨日からすっかり梅雨に入ったような感じだ。石巻は気温が15℃までも上がらず、とても寒い。梅雨と言えば、じめじめと蒸し暑いイメージもあるが、三陸海岸の南の端に位置する石巻では、山背が吹いて寒くなるというのが定番。もっとも、今回の寒さが山背かどうかは定かでない。
 昨日、関東甲信越が梅雨入りしたらしい。テレビのニュースでは、九州や四国に先駆けて、と言っていた。梅雨前線というのは、南から北へと上がって来るものなので、南を差し置いて北が入梅というのは、果たして「あり」なのだろうか?天気図を見れば、ぐにゃりととぐろを巻いた前線が、南東から関東に差し込んでいる。それでも・・・である。
 今朝起きて外を見たら、見慣れない白い船が浮かんでいた。何度となく書いたと思うが、とにかく白い船というのは珍しいのである。双眼鏡で見てみても、少し遠くてファンネルマークが今ひとつはっきりしない。仕方がないので、伝家の宝刀「Marine traffic」で見てみると、蒼鷹丸(そうようまる)という水産教育・研究機構(FRA)が所有する漁業練習船(892トン)だ。分かってから改めて双眼鏡で見てみると、確かにFRAのファンネルマークだ。なぜ石巻に出現したのだろう?だからと言ってどうと言うのではないのだが、船はロマンが感じられるので、珍しい船が来ると嬉しくなる。
 今日は、県総体の代休。
 登山は、コロナ問題が勃発して以来、何しろテント泊が「密」につきまかりならん、という話になって、実質的に登山が大きく制限される状態が続いている。山の醍醐味は夜にある。テントで山中泊ができないというのは、あまりにも大きなダメージだ。まったく、何でもかんでも、コロナにさえ感染しなければ何を失ってもいいのか、と憤ろしい。おかげで、県総体もコロナ以前と大きく様変わりし、仙台市内と言っていいような場所や、スキー場の上り下りのようなコースになってしまったようだ。
 「ようだ」と書いたのは、もちろん、私が行かなかったからである。まともに山中を歩くこともないので、助っ人が必要なくなり、お呼びもかからなくなってしまったということだ(←事情の分からない人には分からない話かも)。おかげで、学校でのんびりした時間を過ごせたのはよかったのだが、やはり少し寂しい。なんとなく感じるこの寂しさは、お呼びがかからなかったからではなく、コロナコロナで教育活動がボロボロになってしまったことの寂しさである。
 午後は、地元のI・D・F(Ishinomaki dream factory)というリチウム電池会社の見学に行った。日頃よく一緒に酒を飲むMさんという方が創業者の一人であるため、以前から、一度見せて下さい、とお願いしていたのである。とは言え、私の都合が付く土日は会社がお休みなので、なかなか実現しないまま、かなりの時間が経過してしまっていた。今日は、念願かなって、というわけだ。
 I・D・Fは、地元石巻の会社とは言え、我が家からは車で30分ほどかかる。山間の田園地帯にある廃校になった小学校の建物を利用して、10年ほど前に生まれた従業員10人ほどの小さな会社である。
 最初に会長のMさんと社長Sさんから、会社と作っている電池の性質についての説明を受ける。マンガンリチウム電池という、プリウスなどに積まれているリチウム電池に比べると、パワーでは劣るが、安全性において圧倒する電池を作る日本で唯一の会社らしい。地元振興を理念とし、石巻での起業にこだわっただけではなく、安定供給のために国内生産にもこだわり、北国での利用を想定して低温での性能も追求したという。
 続いて工場を見せてもらう。生産設備は、思ったよりもこぢんまりしていた。巨大でダイナミックに動く設備に圧倒される工場ではなかったけれど、根掘り葉掘り質問しながら、今をときめくリチウム電池がどのように作られるのかを学べたことは楽しかった。作業そのものはさほど複雑ではないが、非常に繊細で時間のかかるものである。
 我が家の太陽光発電機も、あと1年半で設置から10年となり、売電価格が大きく下がる。I・D・Fの蓄電池を導入しなければ・・・と思いながら帰って来た。