正真正銘の「国宝」

 数日前、法隆寺が、コロナ禍による観光客の減少によって、ついに維持管理のためのお金が工面できなくなったとして、クラウドファンディング(CF)に乗り出す、というニュースが流れた。法隆寺とは、「あの」法隆寺である。目標額は2000万円。
 なにしろ、法隆寺の拝観料は、それなりに高くて1500円である。私も家族を連れて、昨年末、法隆寺を訪ねたが、その時はけっこうな観光客で賑わっていた。だから、まさか「あの」法隆寺が、お寺の維持管理にさえ困るほどの状況に陥っていたとは信じられなかった。思えば、修学旅行生は激減しただろうから、そのようなことのダメージが大きいのかも知れない。
 「あの」法隆寺を守るとなれば、私も協力しなければなるまい。と思って、わずか3日。今日19時のNHKニュースでは、この短期間で、目標額の3倍を超える6000万円超の募金が集まったことを伝えていた。つい先ほど、22時12分にCFのページを見てみると、その金額は更に7126万にまで増えていた。協力した人の数は4066人である。4時間強で1200万円近く増えたことになる。すさまじい勢いだ。募集は7月29日まで続くという。
 これは、ひとえに、多くの人が心から法隆寺を大切なものだと思っていることを意味する。と同時に、今だけの問題ではなく、法隆寺が1400年に渡って、今CFに応じる人々と同じような気持ちの人々によって守られてきたことを想像させる。政府が指定したから「国宝」なのではない。正真正銘の「国宝」である。今後も自然が許す限り、法隆寺には今のままであり続けて欲しい。
 もっとも、今回のCFは、それだけ国民から大切にされ、国も「国宝」と定めている法隆寺が、基本的に拝観料だけを財源として、いわば独力で維持されていることが、果たしていいのかという問題を突きつけている。みんなの財産にはそれ相応の維持するためのシステムが必要だ。
 どんなシステムにすればよいか、私には分からないけれど、今回のCFがきっかけとなってそんなシステムが生まれれば、CFにはCFで集まった金額以上の価値があった、と言うべきだろう。

 あ、そうそう、私も寄付しなくっちゃ・・・。