偉大なり、村神様

 ヤクルトスワローズの村上宗隆選手が、昨日、日本人タイ記録となるシーズン第55号のホームランを打った。我が家には「野球小僧」がいるので、大騒ぎだ。
 私が見ていても、すごいなぁ、と思う。厳しいプロの世界で、高い技術と知恵を持つ投手の球を、あれだけの確率で右へ左へと打ち返す姿はとても人間業とは思えず、正に「村神様」と言うにふさわしい。まったくの他人事ながら、なんとなく胸のすくような快感がある。
 ヤクルトの試合中継を見る機会などほとんどないが、時折目にする中継映像を見るに、村神様は、打つべくして打てているような気がする。多くの専門家が言っているはずのことだが、私が見ていても、選球眼がすばらしい。動体視力と言った方がいいのかも知れない。そもそもボールを見る目が冷静だ。鋭い変化球に対しても、つられて手を出すとか、姿勢を崩されるといったことがほとんどない。見逃すべき時には静かに見逃し、振るべき時には自信を持って振っている。2ボールの後、きわどい球を振らざるを得なくなり、多少体勢を崩しかけたとしても、必ず当ててファールにする。
 一昨日までの2~3試合、少し当たりが止まったように見えていたので、さすがに村神様でも好調は維持しきれないのかと思っていた。しかも、一昨日は途中で試合を退くほどの厳しいデッドボールを受けた。これも不調の引き金となりかねない事故である。ところが、昨日の4打数3安打、2ホームランは、そんな心配を完全に吹き飛ばした。あっぱれ、である。
 更に、私が村神様を好きなもう一つの要素は、外れ1位による入団だということである。その年に、1巡目で1位指名されたのは4選手なので、村神様は5番目以下だったということである。7球団から1位指名を受けた清宮幸太郎は、日本ハムに入団した。こちらは現在、かろうじて一軍に踏み止まってはいるが、打率2割3厘でホームラン15本。お世辞にも「ドラ1」の成績とは言えず、村神様の足下にも及ばない。
 地元球団で言えば、楽天には島内や辛島がいる。ともに6位指名による入団だが、今や明らかに中心選手だ。人間が努力によってのし上がり、序列を逆転させていく姿を見るのは楽しい。最初の評価でその後の全てが決まるわけではない、人間には大きな可能性が眠っている、そんな夢・希望を持たせてくれる。
 一方、私には少し不安もある。村神様のみならず、エンゼルスの大谷にしても、将棋の藤井にしても、最近、極端と思える才能が時々現れる。それが、気象現象の極端化と重なって見えてくるのだ。温暖化が進むと、地球が均質に暑くなるわけではなく、地域差が大きくなる。降水量の差は、既にはっきりと見える形になってしまっている。極端にダメな人間が増えているのかどうかは知らないけれど、自然の一部である人間も含めて、あらゆる部分で世の中の現象は極端化しているのではないか・・・?私はそれが杞憂であることを願う。
 それにしてもやっぱり、村神様は偉大だ。