初税務署

 今週月曜日は高校入試。その後、採点作業が続いていた。どこかの学校で採点ミスが見つかるたびにお上のチェックが厳しくなり、今や職場は戦々恐々。いつ果てるともない確認作業(繰り返し採点)が続く。
 現任校は工業高校で、工業科の教員が多く、普通科の教員が少ない。しかし、入試は普通科目だけだ。昨年(塩釜高校)の半分の枚数の答案を、5分の1の教員で見なければならない。予想はしていたが過酷だ。あまりにもすさまじく集中して作業をしているものだから、時間が経つのがとんでもなく早い。月曜日、入試当日の午前から始めた採点がやっと終わったと思って、ふと気が付くと木曜日も午後になっていた。びっくり。
 それでも、今日は14時に作業が一応終了したため、会議を一つサボらせてもらい、懸案であった税務署に行った。一度確定申告というものをしてみよう、と思っていたのである。「ほう、平居はそんなに副収入があるのか。本も売れないし、講演などという話も耳にしないが・・・」と言っていじめてはいけない。副収入なんて皆無である。ただ、年に幾ばくか、私でも「(ふるさと納税ではない)寄付」というものをする。ある友人から、少しの寄付でも確定申告すると小遣い銭くらい返ってくるよ、と言われたので、さてさていくら返ってくるのであろうか?税務署という場所自体に行ったことがないわけだから、社会勉強だと思って行ってみよう、というわけである。
 国税庁のHPで石巻税務署を調べると、確定申告は混雑するので整理券が必要だ、と書いてある。その他、いろいろなことが書いてあるが、面倒でよく分からない。たとえ手続きに予約が必要だったとしても、そんなことも含めて、直接聞いてみたい。幸い、石巻の税務署は勤務先から徒歩20分、石巻駅のすぐ近く、いわば帰宅経路のような所にあるので、とりあえず行ってみよう、と思ったわけだ。
 税務署に着くと、車の列ができている。確かに混んでいる。ところが、中に入って事情を話すと、書類の有無を尋ねられ、一応持参した旨話すと、すぐに整理券というものをくれた。記入された時間を見ると、なんと3分後だ。エレベーターで3階に上がると、時間待ちのための椅子には誰も座っておらず、「1番」の椅子に座ったと思ったらすぐに呼ばれた。
 署員が私の差し出した書類を見ながら、あっという間に書類を記入してくれる。それを持って次の場所に移動すると、こちらは少し行列がある。並ぶこと15分くらいで、手続き用のPCの置かれた部屋に呼ばれる。こちらも書類を見ながら、署員がてきぱきと入力してくれて、あっという間に作業は終わった。税務署に入ってから出てくるまで30分もかかっていない。
 還付される税金の金額を聞いて本当にびっくり仰天。ウクライナだの国境なき医師団だの言っても、たいした金額を寄付したわけでもないのに、5万円以上が返ってくると言う。私の予想の10倍と言ったところだ。友人が「小遣い銭くらい」と言うから、それくらいを想像したのだ。普通の店なら10回呑める。
 嬉しいといえば、確かに嬉しい。だが、それよりも「悔しい」という気持ちが強い。だって、昨年までだってあちこち寄付はしていたのに、面倒くさいばかりで、どうせたいしたお金が返ってくるはずなんかない、と思い込み、確定申告していなかったのだから・・・。おそらく、私の人生全体で100万円くらいは損をしたに違いない。そんなことを言ったら、署員が「5年間なら過去にさかのぼって申告できますよ」と言う。だめだな。たぶん領収書は全て処分してしまった。
 「なにごとにも先達はあらまほしきものなり」(徒然草)。友人の助言を聞いたのはよかったが、その助言だって、既に3~4年前のものである。世の中のシステムはちゃんと学び、手間を惜しまず動かなければ(教訓)。くそーっ。