チェコの野球チームに拍手を

 我が家には野球狂がいるので、WBCのテレビ中継を見ている時間がそこそこ長い(最初から最後までではない)。私も決して嫌いではないので、時間を取られるのが嫌だなぁ、とは思いつつ、なんとなく見ている。
 面白いなぁ、と思ったのはチェコだ。チェコと日本の試合が面白かったというよりも、面白かったのはチェコの選手たちだ。既に、あちらこちらで話題になっていることだが、彼らはアマチュアらしい。監督が神経科の医師であることから始まって、大学生、電気技師、金融アナリスト、消防士、高校教員、営業(セールスマン)・・・といった具合だ。
 人口1000万人の国で、野球人口は7000人。一応、国内リーグというのはあるらしいのだが、そこで打撃成績上位に入っている選手でも、仕事の都合でWBCに参加できなかった選手が何名かいる、という。監督によれば、チェコの野球は2Aレベル、とのことだが、仮にそれが正しかったとして、2Aレベルになれるというのは驚くべきことのように思う。
 試合は、日本が10対2で勝った。それでも、10対2である。日本にはメジャーリーガー3名を含め、MLB、NLBのオールスターメンバーがそろっていて、その年俸を合計すると150億円を超える。WBCメンバーに入っていない日本を代表する選手と言えば、私には柳田(ソフトバンク)くらいしか思い浮かばない。その日本代表相手に、アマチュアが10対2の試合をしたというのは、本当にびっくりだ。場合によっては、危険だから試合をさせるべきではない、という話にさえなりかねない。
 新聞でもテレビでも、先発した佐々木朗希の快投、大谷翔平吉田正尚、近藤健介の打撃が、大々的に報道されていた。景気のいい話の少ない日本で、WBCに光を見出したい気持ちは分かる。しかし、上に書いたようなチェコのチーム事情を踏まえれば、そんな結果が出るのは当たり前。コールドゲームに持ち込むことさえできなかったことは、むしろ残念な結果だったのではないか。それを、さも素晴らしいことであるかのように報道するのは、少し恥ずかしいことであるようにも思う。
 日本代表とチェコ代表と、それぞれにとってWBCが持つ意味は全然違っていることだろう。私は、「スポーツは遊び」という立場の人間なので、どちらかというと、チェコの姿にこそ純粋なスポーツの姿があると考え、好感を持つ。そうそうたるプロを相手に、卑屈になることも、怖じ気づくこともなく、はつらつとプレーしていたチェコの選手には、最大限の賛辞を送りたい。