ガーシー除名問題

 政治家女子48党のガーシー参議院議員が除名された。昨年当選してから1度も登院していないことによるらしい。
 以前、破廉恥なヤジをとばして辞職を求める声が高まった鈴木章浩という都議会議員がいた。私はその時、「議員辞職はしない方がいい」と書いた(→こちら)。本人が辞めることで一件落着となるよりは、次の選挙まで彼が都議を務め、有権者に選んだ責任を考えさせる方がいい、というような話である。
 ガーシー議員にも、まずは同様の理屈が当てはまる。なにしろ、彼は約28万もの票を獲得したおかげで参議院議員になれたのである。ガーシー氏が当選して豹変したのならともかく、私にはさほど変わっていないように見える。だとすれば、そんな人に票を入れた人が悪いのである。ガーシー氏の身分を留めた上で、「次はこんな人を選ばないようにしよう」と随時確かめあう、というのが正しいやり方だ。彼に支払われる歳費は確かに高額だが、国民がそれに腹を立てることで賢くなれるのなら、授業料として決して高くはないだろう。
 一方、国会による除名が不当かというと、必ずしもそうとは言えない。
 確かに、国会議員は国民の負託を受けてその地位にある。彼の背後に約28万人の支持者がいるということは、除名はその人たちを否定することになるわけだから、安易に出来ることではない。しかし、除名を決めた国会議員たちも国民の負託によってその地位にあるのである。ここで思い出すのは、日本国憲法第43条だ。

「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」

 つまり、いくら小選挙区で選ばれたとしても、議員は「全国民を代表する」、つまりは、選挙区の人のためではなく、全国民のために仕事をしなければならない。このことは、全国区か小選挙区かという地理的な問題のみならず、支持者のためだけに仕事をするか、自分のことを支持していない人も含めた全国民のために仕事をするかという問題にスライドさせることが可能だ。
 すると、ガーシー氏が議員としての活動をサボった場合、不利益を被るのは、NHK党の支持者だけではなく、全国民だということになる。したがって、他の議員が合議の上、彼を除名したとしても、決して故なきことではないのである。
 旧NHK党、すなわち政治家女子48党の浜田聡参議院議員は、懲罰委員会において「不登院という事情で除名処分というのは違法だ」と述べたそうである。議員の除名が憲法第55条で認められているのに、違法も何もあったものではない。合憲ではあるが違法だと言うのなら、まずは法律の合憲性をこそ問題にしなければならないだろう。
 ガーシーという人は、「暴露系You Tuber」なのだそうだ。芸能人の裏話を暴露することによって人気を得ていくという哀しい存在だ。私は、ガーシー氏の不登院が問題視され始めた時、政治家にも後ろ暗い人がたくさんいるだろうから、そんな点をガーシー氏に暴露されることが怖くて、彼に対して強い態度が取れない、ということがあるのではないかと思っていた。しかし、今回彼が除名されたことで、その心配はなさそうだ。
 それが、政治家に対する最近にしては珍しく安心したこと、というのは情けない。ただ、NHK党の政治家女子48党への改名というのもふざけた話であり、ガーシー氏が除名されたからと言って、国民の質が急に高まったりはしないわけだから、引き続き、「政治の質は国民の質の反映である」を合い言葉に、賢くなる努力をしなければ・・・。