予告編:N響の西村尚也

 先月の末、西村尚也を中心とする弦楽三重奏の演奏を聴きに行った話を書いた(→こちら)。その中で、噂では知っていたが初めて聴いた佐藤晴真というチェリストにひどく心引かれた、ということも書いた。
 その後、私は佐藤晴真の「The Senses ~ ブラームス作品集」というCDを購入し、折に触れて聴いてきた。実際に会った佐藤晴真は普通の好青年だったが、演奏を聴いていると気品とも言うべきものを感じる。歌とくっきりとしたリズムのメリハリもすばらしい。
 聴きながらふと思ったのは、この人がバッハの通奏低音を弾くのを聴いてみたいな、ということであった。私の漠然とした直感に過ぎないのだが、とても似つかわしく、その魅力が最大限に発揮されそうな気がする。もちろんそれは、あの能弁なバッハの通奏低音の魅力が最大限になることでもある。いずれそんな機会があるといい。
 佐藤晴真について書いたところで、再び西村のことを思い出したので、このブログの読者の方に予告をしておこうと思う。
 先日、東京で知った話なのだが、西村尚也は、9月26日の演奏会に先立って、9月9、10日と15、16日のNHK交響楽団定期演奏会に登場したらしい。ソリストとしてではない。ゲストコンサートマスターとしてである。
 9月9、10日の第1989回定期では、見習いということでか、マロこと篠崎史紀氏の隣(フォアシュピーラー)だったが、15、16日の第1990回では客席側で、正にコンサートマスターコンマス)としての役割を果たしたそうだ。なにしろN響定期演奏会なので、当然、それらはEテレの「クラシック音楽館」(日曜日21:00~)で放映される。当初は、それを見てから感想の形で書こうかと思っていたのだが、コンマスがいかに重要な役割を果たしているかは頭で分かっているとは言え、聴いただけで、その力が演奏にどのように反映されているかなんて分かりっこないし、もしかすると、このブログを通して西村尚也ってどんな人なんだろう?と興味を持っている人もいるかも知れないので、予告を書いておくことにする。詳細次の通りである。

10月15日放送(9月9日の録画)
指揮:ファビオ・ルイージ
曲目:全てR・シュトラウス
      交響詩ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
      「ブルレスケ」(独奏:マルティン・ヘルムヒェン)
      交響的幻想曲「イタリアから」

10月22日放送(9月15日の録画)
指揮:ファビオ・ルイージ
曲目:ワーグナー(フリーヘル編)
      楽劇「ニーベルングの指輪」~オーケストラル・アドベンチャー

 西村のアルバム「RETRO」(→このアルバムについて)の解説によれば、西村は、2004年のPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)でコンマスとしてのキャリアをスタートさせたが、その時の指揮者がルイージであった。もしかすると、その時にルイージから高く評価され、今回の招聘が実現したのかもしれない(先日会った時に直接事情を聞けばよかった=軽い後悔)。
 聞くところによれば、西村がコンマスを務めた1990回定期は聴衆が熱狂し、ネクタイを外した後も、ルイージが何度もステージに呼び戻されたらしい。私もNHKの映像をとても楽しみにしているところ。