スダチのジャム

 素晴らしい秋晴れの中、久しぶりで牧山に走りに行った。先月の30日以来、約3週間ぶりだ。週末に新人大会や文化祭といったイベントがあったり、雨が降ったりして、これだけ間が空いてしまった。
 最近、東北では熊の被害が多発している。昔は、ツキノワグマは大丈夫などと言われていたものだが、最近はそうでもない。ブナの実が不作で、冬眠前に食糧が確保できず、熊のいらだちがひどいようだ。熊鈴を鳴らしていれば熊が避けるなどというのも昔の話で、最近は街にも出没するし、熊鈴にもむしろ寄ってくるのではないか、というから恐ろしい。もっとも、悪いのは環境を悪化させている人間である。あまりいじめない方がよい。
 今のところ、石巻では、熊出没の話を聞かない。牧山にも、熊がいて不思議はないような気がするが、こちらも今のところ大丈夫だ。それでも、最近、あまりにも熊の話を聞くことが多いものだから、今日は少しだけ不安だった。もっとも、私は登山歴45年以上だが、なぜかこの間、一度も熊を見たことがない。
 山の中を走っていた時間は50分くらいで、その間に、熊どころか、たった1人の人に会っただけだった。こんな素晴らしい秋山に、なぜこんなに人が来ていないの?と不思議に思うほどだった。本当に気持ちがいい。

 話は変わる。今月の初めだったか、知人がスダチを20個ほど持ってきてくれた。人からたくさんもらうのだと言って、今年に限らず、この何年か、この時期になるとお裾分けとして届けてくれるのである。
 ところが、こらがなかなか難物。サンマの塩焼きにでも絞ると言っても、それで消費できる量なんてたかが知れている。しかも、この数年、サンマは甚だ不漁で、気の毒なほど小ぶりのものが、以前の2倍以上の値段で売られているだけなので、まず買うことがなくなってしまった。加えて、私は、酸味の強いものが苦手だ。砂糖漬けにして、ジュース用のシロップにしたこともあったが、ぜんぜん日持ちがしない。というわけで、せっかくいただきながら、最後はダメにしてしまうこともしばしばであった。さて、どうしたものだろう?
 好意を無にするのもはばかられたので、今年は、届けてくれた時に、お気持ちはありがたいが、なかなか使い道に困っている、どうしたらいいだろう?とストレートに尋ねてみた。すると、いくつか提案された中に、ジャムかマーマレードにするというのがあった。ペクチンも大量に含まれているので、砂糖を加えるだけでいいと言う。それは保存も利くし、大量に消費するにはもってこいだ。一度試してみよう、皮だけ使って実を捨てるのはもったいないので、マーマレードではなく、ジャム作りに挑戦することにした。
 たわしでゴシゴシ洗い、へただけ取って、あとはザクザクと適当に切り、これまた適当に砂糖を加えて重しを載せ、1日おいてから火を加える。種が大量に含まれるのだが、そんなものをいちいち取り除いてはいられない。炊いている時に浮いてきたものはあく取りで取り除く、そうでなければそのままにして、食べる時にスプーンでどけるか、ペッペッと吐き出すことにした。2時間ほど炊いて、最後にブランデーを加えてできあがり。そのまま瓶詰めする。とても簡単。
 これが大当たりだった。いかにも柑橘類という香りが強く、皮は苦みがとても強いのだが、これがかえって手応えがあって美味い。大人の味かな?とも思ったが、子どもたちからの評判もとてもいい。種はペッペッと出してもいいが、そのまま食べてしまってもあまり気にならない。やみつきになりそうだ。既製品が売られていないという点でも値打ちがある
 スダチのジャム。これはいい。お薦めです。