高校教員新聞事情

 そう言えば、先週の水曜日、NIE(Newspaper in education)の高校部研修会があって、河北新報社に行った。
 内容は、河北新報論説委員長・古田耕一氏による講話「社説とコラムの視点」、札幌南高校教諭・志田淳哉氏による実践発表「これからのNIE ~主体的な学びとICT」など。最後に、座談会の話題提供として、私がお話しした。
 私が話したのは、高校教員と新聞の関係についてである。この日のために、夏休み明け直後から悪戦苦闘、大嫌いなデジタルと格闘し、グーグル・フォームというシステムを使って、「新聞アンケート」というものを作り、高校教員の新聞との関わりを調査したのである。
 調査対象とし、URLを送ったのは9校。NIEの実践指定校5校と、NIEアドバイザー在籍校3校、そして私の在籍校である。私が苦労してグーグル・フォームを使用したのは、集約を各校担当者に依頼したのでは嫌がられると思ったからだ。
 アンケートのURLを送り、それを校内で配信して回答してもらって欲しいと依頼したが、なんとびっくり、回答してくれたのはたったの49人であった。学校によっては、教頭から校内での配信を禁じられたらしい。
 字数が多くなるので、アンケートの本文をここで紹介はしないけれど、なんでも、禁じられた理由は、新聞を取っていると答えた人に、何新聞か尋ねた項があって、それが思想調査まがいだという理由らしい。本当にびっくり!だって、アンケートはそもそも匿名なのだ。思想調査も何もあるものではない。
 ごく一部だけ紹介しておく。

 自宅で新聞を取っているか?  はい53%  いいえ47%
 新聞を読むか?  毎日読む35%  時々(週2回以上)読む31%  あまり読まない29%  読まない6%
 読む人→何紙読むか? 1紙59%  2紙31%  3紙以上9%

 今回のアンケートに答えてくれたのは、おそらく相当に意識が高い人であろう。それでも、この結果である。全員に答えてもらえば、新聞を取っていない人はおそらく7割、あまり読まない以下の人も半数には達するであろう。しかも、取っているにしても読んでいるにしても、大半は地元紙・河北新報だけだ。これが、今の高校教員の新聞事情である。
 新聞記事の質の低下ということが時々言われる。私もその傾向はあるだろうと思っている。それでも、他のメディアと比べて、信憑性の高さ、一覧性の大きさにおいて、新聞はとても優れたメディアだ。記事の一つ一つが簡潔である点もよい。
 今でも、小論文の参考書などを見れば、たいていは新聞を読むことを推奨している。しかし、指導に当たる側の教員がこれだけ新聞に接していなければ、生徒に「新聞を読みなさい」とも言えないし、言っても説得力を持たない。
 このブログの記事にも、新聞記事に対するコメントの形で書いたものがたくさんある。目の前に記事を置いて、じっくりと考えることが可能だからだ。ネットやテレビではなかなかそうはいかない。また、いろいろな人と話を合わせていくための教養というか、幅の広い知識を得る上で、新聞の一覧性は強力である。私は大いにその恩恵にあずかっている。新聞がない時に、私の知識レベルというのが今と比べてどれくらい低いか、というのは、想像するだに恐ろしい。
 日本でいまだに新聞社の倒産が出ないのは驚きだ。冠イベントからの撤退という話も聞かない。よく持ちこたえていると感心する。しかし、教員の新聞事情がこれでは厳しい。悪貨は良貨を駆逐する(→参考記事)。情報に関しても、この法則は成り立つのだな。