(暗いよ)入試の1日

 今日は、県立高校の入試であった。私は、愚息が中学校3年生なので、事前に問題に触れるような役割はなく、一番当たり障りのない駐車場係というのに任命された。昨年のこともよく覚えていない私は、なぜ高校入試で駐車場係が必要なのか分からなかったが、特に不都合もないので「いいよ」と二つ返事で引き受けた。係のチーフが、あれこれと心配しているので、「そんなにたいした数の車が来るはずないから、あんまり心配する必要ないんじゃない?」と言葉をかけたのだが、やはり私には「今時の親」というものが分かっていなかった。不明を恥じる。
 受付開始の1時間前には、生徒を乗せた親の車が来始めた。まだまだ時間があるので、子どもを車中で待たせたいから駐車の場所を指示しろ、と言う。その後は続々と車がやって来るようになった。170人ほどの受検生のために、100台近い車が来たのではないかと思うほどだった。大きなワゴン車が多い。もちろん、私は苦虫をかみつぶしたような顔をして、適当に誘導棒を振っていた。たいていの受検生は、自転車で来られる範囲に住んでいる。
 何しろ今年は、競争率0.84倍である。受付が始まる30分ほど前には全員が揃ったのではないかと思われる受検生は、ほとんど何の緊張感もなく、たいていは友達同士で談笑している。参考書を開いて最後の1秒まで勉強しよう、などという生徒はいない。宮城県は、幸いにして「定数内不合格は絶対に出してはならない」というお触れが出たりはしていないが、それでもやはり、受検生にしてみれば、めったなことでは落とされないだろう、という気持ちになるようだ。
 受付が終わると、間もなく校門を閉鎖する。今日に限っては、業者の車も立ち入り禁止である。試験が終わる少し前(生徒が外に出るまでにはまだ20分以上ある)には、閉鎖された校門前に長い車列が出来た。学校から200mあまり離れた交差点まで車列は伸び、そこから向こうはどうなっているのか見えない。
 みんな豊かで暇なのだ。しかも、子どもが喜ぶことをすることは、子どものためになることだという発想がある。その結果の車列だ。こんな風にして育てられ、必死で頑張らなくても高校にも会社にも入れる。間違いなく、強靱な精神など身に付けているはずもない。その子たちが作っていく社会とは、どのようなものになるのだろう?パラパラと目を通し始めた答案の内容も含めて、なんだか暗い気持ちになる1日であった。
 あぁ、疲れた。