教員の残業削減案

 私の風邪もだいたい一段落。天気もいいので、今日は2週間ぶりで牧山runに行った。病み上がりなので、自転車で上り口まで行き、歩いていつものコースを一周しようかとも思ったが、なんとなく大丈夫そうだったので、自宅から少しゆっくりめに走った。
 紅葉はほとんど進んでいないが、なぜか落ち葉はそれなりにあって、カサカサと落ち葉を踏みながら走るのは楽しい。木漏れ日の具合が、いかにも秋の里山だ。気持ちのいい小春日和なのに、人は誰もいない。
 ところが、下山の際、いつもより一つ内側の短いコースを走っていたら、下から3人連れが登って来る。近づけば、旧知のS先生夫妻とA先生である。5分ほどの立ち話で別れたが、酒でも持っていればよかったな、と思った。それほど快適ないい風情の秋山。
 閑話休題
 各省庁で予算案を作成する時期だからだろうか。今月に入ってから、なり手不足が深刻な教員の給与改善について、新たな二つのプランが登場し、話題になっている。今回いつもと違うのは、教員待遇の元締めである文科省以外からプランが示されている点だ。
 今春の文科省案(既に中教審が承認)によれば、現在、本給に4%上乗せされている教職調整額というものを、10%に引き上げようという話だったが、今月3日に明らかにされたのは、教職調整額自体を廃止して残業代を支給する、という政府案である。あくまでも「検討を始める」という段階だが、新聞記事で主語は「政府」となっているので、誰が言いだしたかはよく分からない。どうやら文科省でも財務省でもないらしい。
 4%を10%にしようが、13%にしようが、「定額働かせ放題」という現実は変わらない。ならば、残業代を支給する形にして、勤務量を可視化すると共に、仕事量削減へのプレッシャーを強めた方がいい、という考え方のようだ。
 次に、昨日の新聞で知ったのは、財務省が、残業削減時間にノルマを設定し、それをクリアーすれば、教職調整額を5年ほどかけて10%まで増やすことを認める、という案をまとめたということだ。10%に達した後は、残業代の支払いに移行することも検討するらしい。他省庁の制度設計に、財務省が独自の対案を示すのは「異例」だそうである。
 多くの人が言い、私も今までに何度か書いているように、私は、学校に残業代は無理があると思っている。現状からすると、教員の仕事を明確に線引きすることは難しい。特に、自己研鑽と教材研究の境界は確定が困難だ。部活動を中心に、校外での活動も多く、勤務時間は基本的に自己申告に頼らざるを得ない。また、生徒にとって、学校が生活の場であるのと同様、教員にも生活の場と心得ている人が一定数いる。学校には仕事をしている時だけしかいてはならない、などとお触れを出したとしても、「仕事」の輪郭が元々明瞭でないのだからどうしようもない。(→ 参考記事
 このように書けば、教員が残業代を多くせしめようとするように思われるかもしれないが、私が言いたいのは、残業時間の把握が難しいということだけである。現状では相当な残業時間が発生することは間違いがない。
 残業代が政府や自治体の負担にならないように、お金を軸に残業そのものを削減させようとするのであれば、どのようにして仕事を減らすかということについて、よほど明瞭・確実なプランがなければならない。それをせずに、無理に残業を縮減させようとすれば、一定の時間に帰宅したことにして、実際には、その後サービス残業を実質的に強制、ということになるのが明白である。持ち帰り仕事も増えるに違いない。
 残業時間を減らすためにどの仕事を削るか、というのは、「本」を考えずに「末」に手を加えるゆがんだ議論である。学校とはどのような場所かという原点を確認して、それから外れていることはしない。それをしても残業がなくならないなら、給与の改善で対処するのではなく、教員増で対処する、そのような考え方をするべきだ。
 私の考え方はシンプルである。学校は「教科を中心とする勉強をする場」と割り切ることと、教員定数(生徒数ではなく、学級数によって決まっている。普通科の場合、担当する生徒の数は150~250人くらいだが、最悪では300人あまりになる =2単位×8クラス×40人)が現状のままであるなら、個別指導は出来ないということである。すると、学校(少なくとも高校)の仕事の多くを占めると思われる部活、進路、学校行事などに関する仕事はなくなる。先日書いた、「高校は、もっと勉強したい人があえて入る場所」という原則も合わせて考えると、成績不良者への追指導や、生徒が問題行動を起こした時に行われる「特別指導」も、基本的には出来ないと考えてよい。
 ところが、これらの実現は、何の可能性も感じられないほど難しい。それはなぜか?文科官僚の頭が悪いとか、政治家が学校を都合よく利用したがっているとかいうのも、確かに大切な問題ではあるのだが、それだけではない。では、なぜ・・・?その理由はまた明日。(続く)