能動性と楽しい人生



 先週の土曜日、東松島市のSさんという方の家に遊びに行った。この家には二人の息子がいて、上は3年生の時、下は2年生の時に石巻高校で私が担任をした縁である。もちろん、クラスの生徒の親の所に私が私的に出入りするなど普通はないことだが、いろいろな事情があって、息子達が家を出てしまった後にも付き合いがある。私の側が、ちょっと頭が上がらないほどお世話になっているように思う。1月に娘が生まれた後、一度も伺っていなかったので、ご挨拶にと出かけることにした次第である。

 行くと、二番目の息子がようやく大学を卒業した、と写真を見せてくれた。卒業したのは、アメリカ・オクラホマ州の某州立大学である。実は、兄も、数年前にテキサス州の州立大学をダブルメジャー(同時に二つの専攻の卒業資格を得ること)で卒業した。兄は高校卒業後にすぐ渡米、弟は東京の語学専門学校に2年間通った後、兄のアドバイスを受けながら渡米し、専門学校での単位の一部を大学で認定してもらいつつ、僅か3年で卒業資格を得た。

 この兄弟を見ていてつくづく思うのは、一高流に言えば「自発能動」精神の旺盛さだ。日本の大学に進学するのであれば、高校の先生に聞けば何でも教えてくれるし、手取り足取り「過剰」と言ってよいほどの指導と情報があるが、いくら留学が一般化した今日といえども、石巻高校でも一高でも、留学についてのノウハウなどゼロに等しい。いきおい自分で調べ、作業をしなければならなくなる。

 彼らのような精神・姿勢と、アメリカの、学生の主体性重視の精神がぴたりと合って、充実した大学生活を送って成長し、兄はいとも簡単に(?)日本IBMに就職(後リクルートに転職)、弟は今から東京に戻って就職活動だそうだが、私は、多分容易に就職先は見つかるだろう、と思っている。

 「自発能動」の精神があれば成績が伸びるとか、就職できるとかいうけちくさい問題ではない。何よりも、そのような精神の持ち主は生きることがとても楽しそうだ。S兄弟を見ていてつくづくそう思う。