まだまだ捨てたもんじゃない



 先週の土曜日、私はほぼ1日、学校で仕事をしていた。帰ろうと思って、ふとジャケットのポケットに自転車の鍵の束(自転車2種類+自宅+実家)がないことに気が付いた。背筋を冷たいものが走った。学校に来てからは絶対に触れていないので、間違いなく、石巻駅の駐輪場に止めた自転車につけっ放しであると分かったからである。

 実は、脳の老化に伴い、一高に来てから約5年間で、同様のことは3回目であった。そのうち2回は今年である。1回目は3日間も駐輪場に放置してあったのに奇跡的に手付かずで、鍵の付いたまま自転車はあった。2回目は、止めて30分後、電車の中で気付いて真っ青になり、榴ヶ岡駅に着くなり石巻駅前交番に電話を掛け、自転車の場所を告げて回収してもらった。セーフであった。そして今回、今度こそ絶体絶命だと思った。「2度あることは3度ある」とも言われるが、あり得ないと思った。ただでさえも自転車の盗難は多い上に、買って2年半とはいえ、けっこうピカピカで、鍵の束は目立つ。止めた場所も、いかにも人の目に付く所だったのである。

 すっかり観念して、一応止めたあたりを見に行くと、自転車は何事もなく大きな鍵の束をぶら下げたまま、朝と同じ場所にあった。

 3回目が本当に偶然なのかどうか? 世の中、暗い話題の多い昨今だが、まんざら捨てたものでもないなぁ、としみじみ思った。そして、この自転車は、今後、今まで以上に大切にしようと思った。