わらしこ保育園



 昨日は、我が娘が通う保育園の卒園式であった。その保育園は「わらしこ保育園」と言い、1982年に園長の書いた本(高田敏幸『耕せ、耕せ、ぼくらのからだ』青木書店 絶版 古本屋では結構出回っている)がベストセラー(?)になったり、この保育園を題材とした絵本(古田足日『だんぷえんちょうやっつけた』1978年 童心社 これは今でも買える 既に90刷を超えている!)が出たりして話題となり、50人以上園児がいた時期もあったらしいが、その後は減少を重ね、今やたったの8人。60代半ばの園長と、40才過ぎの娘が二人で、園長の自宅でかろうじてその看板を維持する状態となっている。

 私などの目から見ると、その教育は、素晴らしいの一言に尽きる。幼い子どもに長い距離を歩かせ、カニやザリガニを捕まえたり、ドングリを拾ったり、花を摘んだり、そうして手に入れたものを使って、今度は工作をしたり絵を描いたり、そして太鼓を叩いたり、手作りの独楽や竹とんぼで遊んだり、泥遊びをしたり、庭のグミ・ビワ・クルミを採って食べたり・・・まるで40年くらい前の子ども達の生活を、ごく自然に、のびのびと行わせているようだ。かと言って、決して放任なのではなく、さりげない指導の結果として、子ども達の遊びと作業の質は非常に高く見える。私が多少の利便性を犠牲にして石巻という地方都市に住んでいる重要な理由のひとつに、間違いなくこの保育園の存在がある。

 私が日々感心しながら見ているこの保育園が、近年、なぜ不人気なのであろうか。確かに、公立と比べてお金がかかるとか、保育時間の問題とかもあるし、そもそも今や知られていないというのが問題であるが、それよりもむしろ、どうも世間の親には、この保育園が汚く、危険で、面倒な場所に思われているからのような気がする(今や全然そんなことないのだけれど・・・)。本物にこそ価値はあるが、本物ほど面倒臭いから嫌われる、という昨今の日本の現状そのものであって、私には哀しい。

 先週引用したPTA会報の記事に、「一高を世界遺産に」という言葉があったが、「わらしこ保育園」こそ世界遺産にふさわしい。何とも素朴な、心温まる、活気のある、手作りの卒園式に出てそう思った。