阿部勉氏・卒業記念講演



 卒業式に送辞も答辞もない代わりに記念講演があるというのは、一高の本来あるべき知的な格調高い良き伝統であると思う。今年登場したのは、松竹の映画監督で、昨日引いた『男はつらいよ』でも第38作以降山田洋次監督の下でチーフ助監督を務めておられたという阿部勉氏であった。映画作りには何百人もの人が関わるとあって、その世界は社会の縮図。様々なエピソードも含めて、大変印象深く聞いた。印象に残った話として、例えば・・・

*助監督になった頃、残業をするな、そんなことをするくらいなら、1本でも多く映画を見、本を読め、と叱られた。

*スタッフ全員に指示を出すのは不可能なので、監督のイメージだけで映画は作れない。スタッフや俳優の「参加」が不可欠で、そのためには彼らを信じることが大切だ。

*最近は、大学でも映像について学べるところが多いが、新人採用の際、そんなことは考慮しない。大切なのは、人間や歴史を見る目であり、人間としての総合的な力だ。

 なお、阿部氏は講演の中で校長の式辞に触れ、その中の「出る杭になれ、出る杭を叩く男になるな」という言葉を名言と讃えていた。私も、その言葉のみならず、秀逸なる式辞だったと思った。また何かの折に触れることにしよう・・。