海の香りがする・・・



(3月7日付学級通信より)


 ようやく春の気配が少し感じられるようになってきた。日曜日の午後、仙台から卒業生がやって来て、我が家のリビングルームでお茶を飲みながら話し込んでいた。とその時、たった一声ではあったが、私は聞き逃さなかった。ウグイスの初鳴きである。今年は例年よりもずいぶん寒かったのに、我が家の庭のウグイスは目覚めが少々早い。ふと見ると、水仙の芽もずいぶん伸びている。春はいい。


【海の香りがする話 2題】


(その1)宮水の先生達は、PC内に「Aipo」という情報共有システムを持っている。2月20日に海洋総合科長M先生から、「万石浦は豊かです」というタイトルで、写真付きの記事が投稿された。「水温4.1℃の海の中では、このような営みが行われています。」というコメントが付けられた海水の顕微鏡写真には、コポペーダという動物プランクトンとそのノープリウス幼生、そしてたくさんの植物プランクトン(珪藻類)が写っている。それはまるで小宇宙。プランクトンの神秘的な形も、淡い緑や赤の色も美しく、いつまで見ていても飽きることがない。思わず私が、「う〜ん、これは美しい!」と声を上げると、近くに座っていた投稿者のM先生は「そうでしょう」と嬉しそうに笑い、聞いていたI先生は、「私はそれに心を狂わせました」と反応してくれた。そういえば、I先生は、プランクトンをモチーフにした素晴らしいデザイン画をせっせと描いている画伯なのだ。生物の営みは豊かであり、天然の意匠はすばらしい。

(その2)3月5日、渡波の栽培実習場で、万石浦小学校5年生77名による「海苔すき」体験実習が行われた。指導に当たったのは、栽培漁業類型の先生方に加え、増殖研究部の生徒諸君だ。とても楽しかったらしい。生憎天気があまり良くなかったので、漉いた海苔は天日干しではなく、ストーブで乾かしたそうだが、自分たちで漉いた海苔を手土産に、小学生達はニコニコ顔で帰って行ったそうだ。

 実は、昨年度、宮水ではこのようなイベントがよく行われていた。小中学校時代、そのようなイベントに参加したことのある諸君もいるかも知れない。いろいろな学校や保育所の生徒・園児がやって来て、観察・見学したり、実習したり、船に乗ったり・・・。ところが、もちろん、今年はまったくそれどころではなかった。私は、地域と結びついてこその水産高校だと思うので、そのことを寂しく思っていた。

 だから、年度も終わる頃になって、小学生の「海苔すき」体験が行われることを知った時は、本当に嬉しかった。残念ながら、今年は宮水で育てた海藻も魚もいないので、海苔も某先生が友人から譲り受けてきたものを使ったそうだ。来年は、自前の産物でそんな実習が出来るといい。