中学生に語ったこと・・・普通科志向を崩すために



 昨日、2週間続けて日曜日をつぶし、水産高校の宣伝に行っていたということを書いた。少し補足しておこうと思う。

 宣伝に行ったとは言っても、正直言って、とにかく宮水に来て欲しい、などとは思っていない。適切な進路選択をして欲しい、と思っているだけである。だから、宮水の宣伝部署にいる他のメンバーがどうしているかは知らないが、私はことさらに宮水を美化したりしない。中学生をだまして宮水に入れても、それはお互いにとって不幸な結果を生むからだ。場合によっては、中学生の話を聞いて、「君は一高とか三高とか向いてるかも知れないよ」とか、「音楽やるにしても、高校は普通科に行って、大学に入る時にそんな選択したら?」とか語ることもある。こうなると、中学校の先生とあまり変わらない。

 ともかく、宮水宣伝係として私が語ったことは、およそ以下のようなことだ。


・「みんなと同じ」は価値がない。「みんなと違う」には価値がある。宮城県には、公立と私立を合わせて、全日制だけで100の高校がある。しかし、水産高校は全国に46校だ。日本の高校生全部の中で、水産科に在籍している生徒はたった0.3%、これは価値だろう。

・大学を出ても2割が就職できない時代、宮水は4年連続で進路決定率100%だ。これには3つの理由がある。一つは、授業の内容が産業と直結し、資格もたくさん取れるということ。もう一つは、創立116年と県内で4番目に古く、強いOB人脈があるということ。そしてもう一つは、「少数派の価値」(前述)だ。入るのは非常に簡単な学校なのに、就職内定率が高く、国立大学にも公務員にも取ってもらえる、これはそれらの結果である。

・水産高校は、普通の学校では経験できない特殊で大きなイベントが淡々延々と日常的に行われている学校だ。例えば、航海やマリンテクノという類型(専門)に入ると、60日間かけてマグロを捕りながらハワイを往復するという実習がある。しかも基本的にタダだ。

水産業とは「魚を捕る」とだけ考えるのは大間違い。船で魚を捕ることもあるが、育てる漁業もある。捕った魚は加工・調理し、流通・販売させる必要がある。船を動かすためにはエンジンの管理も必要だ。水産高校は総合実業高校である。

・国数英を机に向かって勉強するのが好きか?それが好きなら、普通科という選択も悪くない。しかし、人間にはそれぞれ各自の能力や適性というものがある。中学校でぼんやり考えずに生活していると、自然に普通科に進むことになる。それが本当に自分の高校生活を輝かせることになるのか?本当に充実した高校生活を過ごせるのか?ここは考えどころだ。


 以前にも何度か書いたことがある(2011年9月22日、23日、2012年2月26日など)が、私の理想は「複線化された社会」である。高校くらい出ておかないと・・・と言わず、小学校か中学校を出た時点で、いろいろな進路が選択できること、しかも上級学校に進むことが「勝ち組」で、それ以外の路線を選ぶと「負け組」というのではない、対等な価値を持つことが絶対に必要だ。勉強したくもないのに仕方なく高校に入って、本人も先生も面白くない思いをするのはナシなのである。「勉強したい」と言って、ほぼ100%が高校に進み、そのうち半分が大学に進んで、大学生が分数の計算が出来ないとか、平均の概念が理解できていないというのはあり得ない。本音は「勉強したくない」のに、やむを得ず進学するという、社会の停滞要素であることが見え見えだ。

 しかし、私が大騒ぎをしても、今の「少しでも上の学校に進んだ方が幸せになれる」という共同幻想はすぐには変わらない。だとすれば、せめて高校進学の単純な普通科志向を崩すこと。それが私の今の使命だと思っている。