冬=山小屋の魅力は極まる



 石巻も大雪である。私は昨日から、某高校山岳部に付き添って蔵王に行っていた。下界がこの状態だから、山はとんでもない悪天候だっただろうと思うだろうが、それほどでもなかった。

 昨日は風も弱く、1月としては珍しく、刈田岳の山頂に立つことが出来た。もっとも、視界は10メートルくらいで、マイナス12度、15メートル前後の風が吹いていた。それでも、何しろ過去10年ほど、毎年のように生徒を連れて蔵王に入るが、1月に刈田岳の頂上に立てたのは初めてか2回目か、といった具合なのである。

 某高校所有の山小屋に泊まった。大きなストーブに薪をがんがん燃やし、快適な夜を過ごした。深い雪に覆われ、ひっそりと静かな小屋の中に、薪のはぜる音だけが聞こえる。夜中に雪が降り始めた。

 今日は細かい雪が降っていたが、風が全然なく、ひどく気温が高かった。小屋の周りで朝8時半にマイナス2度である。降った雪が服に付くと、すぐに溶けて水滴となった。聖山平経由、井戸沢を越えて、澄川スキー場に下山した。

 途中、聖山平の急斜面を下ったあと、井戸沢の上で、S君の姿が突然完全に消えた。井戸沢の上に積もった雪を踏み抜いて、2メートルほど下の沢に落ちたのだ。一瞬真っ青になったが、ただ真下に落ちただけで、怪我もなかったので胸をなで下ろした。腰近くまで水に浸かり、少し冷たい思いはしたものの、幸い、スキー場に下りるだけだったし、気温も高かったので、大事には至らなかった。

 ところで、昨年の9月に、山小屋で山岳部以外の生徒20人を集めて体験宿泊会を行った(2012年9月17日記事参照)。その時、私は以下のようなスピーチをした。

 「みんな山小屋を素晴らしいと言うが、山小屋が本当に魅力的なのは冬である。澄川スキー場から吹雪の中を3時間歩いてこの小屋にたどり着くこと自体が、なかなかに心ときめくイベントだし、薪ストーブを燃やし、そこでキンキンに冷えたビール、もとい、ジュースを飲むのがどれほど美味いか!9月なら一般の高校生も連れて来れるが、真冬は無理だ。その楽しみは山岳部員の特権だ。山岳部のメンバーとして、一緒に冬の小屋に来ようではないか。」

 自分としては、なかなかよく出来たスピーチだと思い、一人悦に入った。そして、私はその中の少なくとも一人くらいは、冬に山行を共にするだろうと確信していた。ところが・・・、残念ながら、そのような高校生は現れず、昨春以来の3人の部員が今回のメンバーであった。

 とは言え、今年の3人の部員は立派である。歩いている最中に、突然「ここどこ?地図で教えて・・・」と問いかけた時、白一色で特徴の把握しにくい風景で、視界も良くないにもかかわらず、思いの外的確に現在位置を指し示して見せた。普通の高校生は、3年生になってもなかなかこれほどは地図が読めない。夏道の見えない中、コンパスを使っての山小屋探しもきちんと出来た。意欲があって、素直にひたむきに学ぶ高校生はいい。