秋保が「なんばグランド花月」に!・・・小野田正利氏の講演



 先週末の2日間は、秋保の某ホテルで、教職員組合の勉強会に出席していた(一応、私が形ばかりの実行委員長)。開会行事に続いて行われた記念講演にご登場いただいたのは、大阪大学大学院教授、「モンスターペアレント問題の第一人者」という触れ込みの小野田正利氏である。

 もともと私の知らない人だし(←これは本当に不勉強であった!)、モンスターペアレント問題は、切実必要な問題ではあるが、聞いていて夢が広がる楽しそうな話には思われないし(むしろ気が滅入ってきそう)、阪大教授という肩書きもいかめしいし、何となく気が進まないままその時間を迎えた。

 登場したのは、黄色のTシャツの上に、ピンクに白い水玉模様というど派手なブレザーを着た小太りのおじさんである。けっこう広い会場なのだが、マイクは使わない、地声で120分間話すという。講演が始まると、そのおじさんが、ステージ上を右へ左へとうろうろしながら、大きな声でまくし立てる。ご本人が、「秋保のホテルの一室ではなく、『なんばグランド花月』だと思って下さい」と言っていたとおり、意外にもめっぽう面白い。モンスターペアレント問題の第一人者と聞いていたが、「モンスターペアレントなどという言葉は使ってはいけない。それは相手との間に壁を作るだけだ」というごもっともな話から始まり、「100%の力で受け止めず、70%の力で対応しろ」「トラブルは社会の生きづらさと、それに対する本人の葛藤の表れであると思え」「批判をするのではなく、相手の怒りのエネルギーは何か?相手の立場に立つと見えるものは何かを考えろ」「トラブルを乗り越えるためには、職員の共同性が非常に大切で、それを作っていくためには、一見無駄な時間と空間と(他愛もない雑談など)が必要だ」「同僚性は理屈ではなく、汗と笑いとから生まれる」「保護者対応は必須の要素ではない。教師にとって大切なのは、授業力と子どもを観察する力だ」というような話をした。大笑いし、納得し、共感しながら聞いているうちに、あっという間に120分が過ぎていた。全国の全ての教職員、特にその中でも管理職や教育行政官に聞いて欲しい話だと思った。

 夕食時、お礼かたがた多少のお話をした。講演の時のど派手で騒々しい印象とは打って変わって、気さくで穏やかな紳士であった。その後、小野田先生は短いスピーチをし、自分がなぜ派手な服を着、ステージ上を歩き回りながら話をしたかについての種明かしをされた。どこまでが本当かは分からない。おそらく、語っていないことはあるかも知れないが、語ったことについては本当なのだろう。そこには、話を聞く人を眠らせず、自分に関心を引きつけておくための周到で合理的な工夫があった(派手なものは人の目を引きつける、などというだけの単純な話ではない)。なるほど、これはプロの仕事だなと、心底恐れ入った。

 先生の所には、年に400件もの講演依頼があるそうである。実際に足を運べるのは100回に満たないため、どうしても先生に来て欲しければ、2年後でのスケジュール調整となるらしい。その人気の背後には、先生の教育論・学校論への共感とともに、考え抜かれた話術とパフォーマンスがある。私は、宮水で同僚に参加を呼びかける際、記念講演についての宣伝が極めて甘かったと反省した。評判は伊達に生まれるわけではない。