白内障の手術



 昨日の記事と順番が逆になるが、今週は月曜日にお休みを取り、平成眼科という病院に行った。私が病気なのではない。老いた母親が白内障の手術をするというので、付き添いに行ったのである。

 病院があまりにもきれいで感心した。思えば、一昨年、人間ドックで仙台オープン病院に行った時も同様の感想を持った。病院というのは元々静かな所だし、暖房はよく効いているし、さもない病気、いや、仮病でもいいから、1週間か10日くらい入院できればさぞかしいい気分だろうと、不埒なことを考えてしまう。

 病院に行くと、手術はビデオモニターで見学できるので、希望者は申し出るように、みたいな貼り紙がしてあった。もちろん、私は「希望者」だ。

 手術室の隣に、モニターを見るためのスペースがあって、小さなテレビが置いてある。「平居さん、始まりますよー」という声がかかると、画面に母のものと思しき目玉(←「眼球」よりイメージが合う)が大写しになった。目玉一個が画面一杯に見えるので、一瞬ぎょっとする。薬液なのか水なのか、透明な液体を目玉にかけると、角膜の下のところに小さな切り込みを入れる。あまりにも拡大されて見えるので、長さの実感が持てないのだが、おそらく3ミリか4ミリだろう。槍のような形をしたメスで、素晴らしくよく切れる。宮水の理科の授業で、年に一度、「ブタの目玉の解剖」というのをやるのだが、眼球を切るというのはなかなか難儀なことで、そのうち、切っているのか、破っているのか、つぶしているのか、分からなくなってくるのが常だ。よく切れる刃物による作業というのは、見ていて気持ちのよいものだな、と思った。

 角膜の内側に、正に白濁したオリのようなものが溜まっている。それをぐちゃぐちゃとかき回し、吸引器で吸い取る。その後、折りたたんだコンタクトレンズのようなものを入れて、中で膨らませる(延ばす?)。これでおしまい。縫ったりしない。予告されていたとおり15分。血は1滴くらい出た。どろりとした白濁物で濁っていた目は、完全にクリアーになった。これはよく見えるようになっただろうなぁ、と、私が見ていても感動する。間もなく金属製の眼帯を付けた母が、歩いて手術室から出て来た。

 医師のやること、特に外科的処置というのは密室で行われることがほとんどなので、目にする機会などないものだが、こうして見てみると、機器についても方法についても、いろいろな工夫が為されていて、面白いものだろうな、と思った。今回の母の手術については、目玉ばかりが大写しで、まぶたを開いた状態に固定するための器具が、どこにどのように取り付けられているのか、とか、医者は術部を目だけで見ているのか、拡大鏡を使っているのか、など、もう少し周辺情報が見えてくれないとつまらないなぁ、と少し思った。