人と人とをつなぐ言葉



 日付がデタラメであるが、もうひとつ遡って触れておこう。

 先週木曜日の午後、河北新報社で行われた「NIE実践発表会」というのに行った。他の小中学校6校とともに、我が宮城県水産高等学校が2年間のNIE(Newspaper in education=教育に新聞を!)研究協力校としての活動を終えるに当たり、その内容を発表するという場である。私に与えられた発表時間は15分。

 この会には過去2年も出ているので、他の学校がどのような発表をするのかはおよそ見当が付いていた。見事に整理されたパワーポイントを使って、立て板に水を流すような口調で、校内一丸となった実践報告をするのである。

 すごいなぁ、と思う。実践の内容についても、発表についてもである。しかし、その背後にどれほど膨大な残業(持ち帰り仕事を含む)があることか、と、いささか気の毒な思いをも抱く。同時に、その発表をしっかり聞いている人はほとんどいないのではないか?いいとこ、写真を見ているくらいだろう、と思った。なぜなら、どの発表も時間の割に内容が多すぎる上、あまりにも機械的・事務的・機能的に過ぎていたからである。いくら「実践発表会」という場とは言え、話をするのも、聞いているのも人間である。

 そこで、今回、私はあえてパワーポイントを使わず、簡単なレジメの紙1枚に、研究報告書用に書いた6ページのレポートをそのまま付けて、実践報告というよりは宮水もしくはNIEについての「演説」をすることにした。多少なりとも違う観点を投ずることができれば、という思いと、人々は人間的な、生の話なら聞くに違いない、と思ったからである。話の冒頭で、「私は文明の利器が得意ではないので、パワーポイントを使わずに話させていただきます」などと言い訳のような断りを述べたが、いくら私でも、初歩的なパワーポイントの作り方・使い方くらい分かっている。あえて使わなかったのである。

 だいたいどのようなことを、どのような表現で話すかは考えていたが、格好を付けて、何も見ずに話すものだから、漏れや重複、変なつなぎ言葉(「え〜と」の類い)など多くあって、決していいスピーチになったとは思わなかった。自己採点は50点である。赤点にはならないにしても、平均点以下のレベルであった。

 ところが、終了直後から、その後の懇親会の会場でも、何人かの方からお褒めの言葉をいただいた。わざわざ褒める必要などない場面だし、他の発表者にそんな声のかけ方をしている人がいる風でもなかったので、それなりに本心なのだろう。だが、やはり発表として、もしくはスピーチとしての質は高くなかった。だとすれば、これはいわばアナログの力である。実践内容はおろか、話の内容もあまりたいした問題ではないのだ。むき出しになった人間の個性に人は反応するのである。