NIE全国大会in秋田(1)・・・尾木ママと県知事にまいった



 昨日から二日間、NIE(Newspaper in education)全国大会に参加するため秋田市に行っていた。東北で全国大会が行われるということで、宮城県NIE推進委員会が貸し切りバスによるツアーを企画した。それに乗せてもらえたのである。半世紀、そのうち5分の4も東北地方は宮城県で生きてきたのに、秋田市街を訪ねたのは初めてである。仙台とは比べるべくもないが、思いの外立派な都会であった。千秋公園(久保田城=秋田城跡)南側・大手門の堀に咲いた蓮が見事だった。

 30日の午後は全体集会。目玉は、尾木直樹尾木ママ)の講演。だいたい、このような大会の記念講演は、地元に関係の深い人を呼ぶものだが、尾木氏は秋田と何の関係もないらしい。秋田というのは、全国学力テストの成績が常にトップクラスの教育県で、今回の集会でも、そのことが繰り返し話題になった。それなら、記念講演の講師にできる人物も多く育っているだろう、と思うが、そうではないのだろうか?

 尾木氏は、県民会館1階席の最後部から登場。スポットライトを浴び、両手を高く上げ愛想を振りまきながら、ステージへと上がった。まるで芸能人である。テレビで見て知ってはいたが、女性的な、もしくは甘えたような、ベチャベチャとした話し方をする。一教員がマスコミによって芸能人に仕立て上げられた典型であろうと、私の感性を逆なでする。学校もしくは教育に関して何か問題が起きると、この人のコメントばかりが載るのも気にくわない。本人がどんなつもりかは知らないが、この人の言うことだけがまるで「答え」であるかのようだ。

 と、例によって斜に構えていた私であるが、いざ話が始まると、残念ながら面白い。というか、「上手い!!」と思った。話がうまいからマスコミに担がれたのか、マスコミに担がれたから話術が磨かれたのかは知らない。だが、かなり意識して人を飽きさせない術を考え、身に付けていることはよく分かった。しかも、ステージでの態度と違って、内容についてはパフォーマンス的なところが一切ない。私の目から見ても、教育の本質を外していないと思う。この人は、本当に真面目に、地に足を付けて中学校教員をしてきたのだな、と感心した。こうなると、彼のステージマナーや話し方は、大衆を引き付けるための小道具として、むしろ尊敬すべきものに思われてくる(→参考記事)。悔しいけど、まいった。

 夜は数百人による大懇親会。一番面白かったのは、アトラクションの「なまはげ太鼓」ではなくて、意外にも佐竹秋田県知事のスピーチであった。秋田城の城主・佐竹家の末裔らしいが、見かけはただのおじさん。そのアンバランスの面白さもともかく、彼がスピーチの中で最も長い時間を費やしたのは、自民党が大学の文系学部を減らせと言いだしたことに対する批判であった。ご自身は理系の出身らしいが(調べてみると東北大学工学部精密工学科)、役に立たないという理由で文系学部を切り捨てれば、世の中全体が深みを失い、ダメになっていくと、正に口から泡を飛ばさんばかりの口調で語っていた(自民党に支持されて当選したはずなのにね)。一方、秋田県は、向こう何年間かで全県民が英語を話せるようにするなどという変な(?)目標も、力を込めて語っていたので、何だか、いろいろとアンバランスな感じの人である。ま、知事のスピーチが面白いなどということは滅多にないので、珍しい経験をさせてもらった。 (続く)