雲雀野海岸・町内会総会



 最近、息子とよくキャッチボールをする。場所は、我が家からトコトコ階段を下りていった旧門脇小学校周辺の空き地だ。昔は門小の校庭で自由に遊べたのに、津波の余波で門小が燃えた後、2年余り経ってから、諸般の事情で校庭を市立女子高が使うようになった結果、女子高生ウォッチャーの出現を警戒してフェンスが作られ、立ち入り禁止はもとより、女子高生が使用中は写真撮影もまかりならんとの看板も付けられた。もはや、近所の住民だからと言って、子ども連れでも入れる雰囲気ではない。周りの民家は全て流されたり燃えたりしてしまったので、空き地に困るということはないが、整地されていない上、ガラスや金属の破片も多く散らばっており、コンディションは校庭に比べると格段に劣る。それでも、場所があるだけありがたいと思い、毎日のように15〜30分のキャッチボールに興じる。休日は、すぐそばを頻繁に被災地見学ツアーのバスが通る。車内の人々からは、被災して遊ぶ場所にも困っている可哀想な親子に見えるんだろうなぁ、と想像しては笑ってしまう。被災したおかげで、門小の校庭が使えなくなったわけだから、決して間違いとも言えないのだけれど・・・。

 うるさいくらいにヒバリの鳴き声が聞こえる。住宅がびっしり建っていた時には、ヒバリの存在なんか意識したことがなかった。この南側数百メートルの所にある海岸を「雲雀野海岸」というのだが、それは単にイメージのよい言葉を選んで付けたというのではなく、実情を踏まえての命名だったのだ、と、最近になってひどく納得するようになった。キャッチボールをしながらの意外な発見である。

 今日の午前中は町内会の総会であった。総会をしますよという案内の回覧板には、いつも「委任状」が付いている。出られない人はそこに記名・押印する仕組みなのだが、最初から委任状が付いていると、そこに名前さえ書けば無理に出なくていいですよ、と言われているような気分になる。それでも、地域の結びつきは大切だから、と出席した。366世帯ある日和が丘2丁目、4丁目、南光町を合わせた「第一日和親交会」の総会に出席したのは40名。委任状に記名・押印したのが、250名であった。

 まるで老人クラブのような雰囲気で、説明は長いし、問答はちぐはぐ。単純な質問に対して、答弁する担当者が、「だったらあなたこそ担当者としてふさわしい・・・」とけんかを売るような答えを述べると、質問者も含めて、出席者の多くがニヤニヤして顔を見合わせる。そのトンチンカンな答えとムキになった表情が、まるで余興のように見えた。9月に敬老会を開くのに、「老人」の線をどこに引くのか、という話になった。高齢化がひどいため、地域の集会所に入りきれる人数で線を引こうと思うと、毎年、基準を引き上げることが必要で、今やこの地域の「老人」ラインは73歳、という答弁が面白かった。所要1時間30分。昨年以前の記憶がないのだが、質はともかく、信じられないほど質問や意見の出る会議らしい会議だった。なんだか、妙にほのぼのした気分で帰宅した。特別用事があったわけでもないのに、さっさと帰ってきてしまったのは失敗だったかなぁ、懇親会も出ればよかったかなぁ、と少し思った。