第1回ラボ・トーク・セッション

 昨晩は、第1回「LAB TALK SESSION」というイベントを開催した。「LAB」とは、かつて書いたことのある(→こちら)カンケイマルラボという器屋さんである。そこで、専門家による知的に面白いお話しを聞き、また、参会者同士でそのお話しをきっかけに学際的な交流をする、というのが会の趣旨だ。主催者は、3月まで石巻専修大学長であられた坂田隆先生と、ラボの経営者でフランス文学者の須田マサキさん、そしてなぜか田舎の水産学校の教員・私である。4月に我が家で花見をした時に、坂田先生とお話しする中でそんな企画の種がふと生まれ、以後、何度か相談の集まりを持って、ようやく実施にこぎつけた。
 記念すべき第1回の話者は、4月から石巻専修大学長に就任された尾池守氏である。題は「ロケットを安全に飛ばす」。尾池先生は、JAXAロケットエンジンの開発に取り組んでこられた宇宙工学・流体力学の専門家である。昨夜は、ロケットが飛ぶ仕組みから始まり、先生が開発に携わったエンジン内タービンの軸受け部分についてのお話しをして下さった。非常に明快平易で、私のような門外漢でも、それなりに理解できたような気がする(ただし、ロケットもしくはロケットエンジンの実物を見たことがないので、実感的に把握することは少々難しい)。プロジェクトが失敗した時に、アメリカの研究者は徹底的に原因探しをするが、悪者捜しにはならない、一方、日本では、誰が悪いかということを追求して、本当の意味での原因究明はしない、といった文化論的な部分も興味深く聞いた。
 ラボのフリースペース(売り場ではない所)はさほど広くないので、定員を20に限った。申込者多数で収拾が付かなくなるのではないか?という心配もしたし、20人集まるかな?という心配もした。しかも、知的好奇心の強い人たちが集まって来るだろうという前提で、フリートークの時間を長く取るため、尾池先生には、ロケットエンジンという複雑巨大な機械についてたった30分で話して下さい、などと無理なお願いをしたので、逆に、本当に場が持つのかな?などという心配もした。
 結果としては、いずれの心配も杞憂であった。一人としてお断りしなかったのに、約20人が集まり、尾池先生のお話が終わると、質問は途切れることなく続いた。飲み物と軽食付きということにしたのだが、お酒と食べ物を片手に、その後もずっと尾池先生のまわりには人の輪が出来続けたのである。
 事前に主催者同士で語り合っていたのだが、知的好奇心の強い面白い人が集まれば、集まった人同士の話も自ずから面白いものになるだろう、だとすれば、この会の質を決めるのは、話者ではなく参会者だな・・・。尾池先生のお話を聞いて、話者もやはり重要だとは思わされたが、やはり、それだけではいい会にならない。昨晩は、参会者の職業や専門分野も雑多で、参会者同士の交流も面白かった。(おかげで、深夜まで飲み過ぎて、今日は1日中調子が悪かった。)
 ところで、やはり若い人がいた方がいいな、若者に勉強の機会を与えたいな、と思ったので、勤務先を中心に、20代の教員に私はせっせと声掛けをした。ところが、若者は来なかった。理由は「仕事が忙しい」ということらしい。確かに、何かの間違いで、私が時に20時頃まで学校にいると、まだ多くの教員が仕事をしている。部活などをやらざるを得なければ、そういうことになるのだろう。18:30に市の中心まで行くのは難しいのかも知れない。だが、だからといって、仕事の多忙を理由に(←本当かどうかは不知)今回のような知的イベントにも参加出来ないとしたら、長期的に見て、大きなものを失うことになるのではないだろうか?私だったら、「今日に関してはこっちが大事」と、ラボに馳せ参じると思う。そうしていろいろなものを吸収していかないと、いかにも仕事優先で真面目な教員のようでいながら、つまらない教員になってしまうと思うからだ。あるいは、彼らにもそういう時というのはあって、今回のイベントが、彼らにとってそこまで魅力的には見えなかった、というだけなのかな?
 一応、2ヶ月に1回のペースでやりたいと思っていて、第2回は9月に予定している。あまり大々的に宣伝するのが怖いので、昨夜についても事前には書かなかった。強く興味を引かれて、ぜひ行ってみたい、と思った方がいれば、コメント欄を使ってメールを下さい(返信用アドレスの記入は必須)。