今日届いた「年賀状」

 言うまでもなく、今日は4月12日である。年賀状を受け取った。消印の日付は1月1日で、場所は「昭和基地内」だ。風景印と呼ばれる絵柄付きの消印で、基地の横に船がとまり、その手前をペンギンが4羽歩いているデザインだ。すご〜い!昭和基地から年賀状をもらったのは、さすがに初めてである。
 あわてて国立極地研究所のホームページを開き、輸送船「しらせ」の動向を見てみた。すると、「しらせ」は昨年11月11日に東京・晴海埠頭を出港し、12月28日に昭和基地に接岸した。人員の交代だけでなく、物資を下ろしたり、回収したりという作業を2月15日まで続けて出港し、一昨日、4月10日に東京に戻ってきた。「しらせ」が下ろした荷物の中に、南極観測隊員からの手紙類が入っており、それが今日になって我が家に届いた、というわけだ。消印が、本当に昭和基地で押されたものなのか、東京で下ろした後に押されたものなのかは分からない。
 切手は富士山の図柄の52円切手だが、なにしろ、いくら遠くても南極・昭和基地は外国ではない。南極条約によって、南極はいかなる国も領有権を主張できないことになっているからだ。だから、実際にこのはがきが南極で消印を押されたとしても、日本の切手で全然かまわないのである。
 はがきを私にくれたのは、第58次越冬隊員として昭和基地に滞在中の医師・大江洋文さんだ。現在、河北新報で「南極見聞録 こちら越冬隊Dr,大江」という不定期の連載(2回目まで出た)をしているから、「あ、読んだことある」という方もいるかも知れない。大江さんは第56次に次いで2回目の南極である。1回目の時は、美しい写真を中心としたブログを楽しく読ませてもらった。が、2回目となるとさすがにこちらの好奇心も鈍り気味だ。そこへ今回の新聞連載である。すると、また違った気分で大江さんの視点を楽しむことが出来る。
 はがきの文面には、「謹賀新年 2017」というお決まりの挨拶言葉の下に、第58次越冬隊と「しらせ」二つの大きなスタンプが押してあり、末尾に「昭和基地 69°00′25″S  39°35′01″E」と印字されている。残念ながら本人の字は全然書いていないが、やっぱりいいなぁ、お手紙。
 いかに昭和基地と言えども、メールは普通に届く。私は掛けたことも掛かってきたこともないが、電話も通じるらしい(国内料金!)。しかし、やっぱりつまらない。少なくとも、相手との間に大きな距離の隔たりがあることは実感したい。4ヶ月遅れの年賀状は、その意味でも嬉しかった。
 ところが、困ったことに、返事は出せない。仮に返事を書いたとしても、それが昭和基地に届くのは、「しらせ」が次に南極に行く時なので、今年の末くらいになってしまう。1年かけて年賀状が南極と石巻との間を往復するというのも面白いが、いくらなんでも、面白いを超えてマヌケだ。とりあえずは、ありがたく部屋に飾っておくことにしよう。