念願かなって新垣隆

 今日は、午後から、娘と二人で新垣隆さんのクリスマスコンサートというのに行った(石巻市鹿又のN's−SQUARE)。主催が誰かは知らないが、市内の楽器店で無料の整理券を配布していたので、2枚もらったのである。
 新垣隆とは、あの佐村河内守ゴーストライターだった人である。一種の悪に関与したとは言え、記者会見を見ていると誠実な人柄が滲み出ていたし、ピアノは相当よく弾ける人だという話もあったし、一度演奏に接してみたいなぁ、という気持ちは前々から持っていた。この間、石巻界隈に来る機会が何度かあったことは知っていたが、場所が悪かったり日にちが悪かったりで行けなかった。念願かなって今日・・・というわけである。
 さて、今日の演奏会。前半は新垣さんのピアノで「子犬のワルツ」「ロンド・カプリツィオーソ(メンデルスゾーン)」「京の幻想(新垣隆)」「ソナタ(同前)」「石巻の印象(即興演奏)」そして、「クリスマスソングメドレー」。後半はヴァイオリンとチェロを交えて、「ホール・ニュー・ワールド(ディズニー「アラジン」より)」「チャールダーシュ」「リベルタンゴ」「きよしこの夜」、そして「ソナチネ新垣隆)」、アンコールとして「花が咲く」であった。
 何と言ってもよかったのは新垣さん自身の曲である。「京の幻想」と「ソナタ」は、「自分が神童キッズだった時代の曲」と言っていたが、いったい何歳の時の曲なのだろう?ストラヴィンスキーの影響を受けているとも言っていたが、これらの曲を小学校で作ったなら正に病気、中学校でなら神童、高校でなら天才だな、と思った。帰宅後、ネットで調べてみると、前者は小学校5〜6年生、後者は中学校3年の時の作品らしい。前衛的で完成度も高く異常な世界だ。即興演奏もお見事。
 「ソナチネ」は、佐村河内の作品として発表され、フィギュア・スケーターの高橋大輔がソチ・オリンピックで自分の演技に採用して有名になった曲である(私の最も有名な記事=「「佐村河内守」現象について」のコメントに、某氏による言及がある)。Wikipedia で引いてみると、佐村河内が義手でヴァイオリンを弾く少女のために作曲し贈呈した曲だということになっている。今日登場した高校生ヴァイオリニストも右手が義手だった。義手でヴァイオリンを弾いている人なんてめったにいるものではない。もしかして、贈呈されたご本人だったのかな?とても熱のこもった演奏だった。
 新垣さんという人は、例の事件以来、結構引っ張りだこで、テレビなどに登場の機会も増えていると聞いていた。だったら聴衆を言葉で捉えるのも上手く、弁が立つんだろうなぁ、と思っていたが、そうではなかった。ピアノを弾くと流麗で自然な音楽を作り出すのに、マイクを持つと緊張して言葉がのどに引っかかり、半ばしどろもどろといった感じだ。
 しかし、私にはそれも新垣隆の人柄であり、魅力だと思った。思えば、ステージ衣装は、どこかの紳士服量販店で吊って売っているような、けっこうペラペラの安っぽいものだし。千葉から連れてきたヴァイオリンとチェロの演奏者は女子高校生だったが、それも、これからプロとして将来が嘱望される雰囲気なんて微塵もない、本当のアマチュア音楽愛好家レベルの子供たちだ。
 つまり、新垣さんのピアノの実力以外は、全てプロのステージではなく、気の利いた家庭音楽会といった趣なのだ。それが、妙にほのぼのとした雰囲気を作り出していて心地よい。娘も大喜び。本当に楽しい1時間半を過ごすことができた。主催者にも新垣さんにも感謝、感謝。

 帰宅後間もなく、塩釜高校生に誘われた「いしのまき学校」の「中間報告会」というのに出向いた。それがどんな団体かも、何を誰が「報告」するのかもよく分からずに行ったところ、5人の高校生が、1人10分の持ち時間で、自分がこの1年間どんな活動をし、何を考え、来年は何がしたいかを発表する会だった。5人が5人とも、あまりにも自立していて、しっかりと物事を考え、堂々と話をするので、私はすっかり度肝を抜かれてしまった。身近な所にもすごい高校生がいるものだな。