さすがにもう無理!・・・行政の崩壊とシリア攻撃

 自衛隊の日報であれ、森友学園加計学園関係の文書類であれ、信じがたいものが後から後から発見されている。私は以前、二つの学園と首相との関係について、いくら深く結びついていても、首相を「黒」とするだけの証拠は見つからないだろう、というようなことを書いた(→こちら)。
 首相が非常に狡猾・老獪に見える上、その時には、まさか「首相案件」が登場してくるとは思ってもみなかったからである。この間に見つかった文書類(改ざん含む)と時系列に沿った状況証拠とを合わせて考えると、さすがにもはや「アウト」だろう。首相自身の答弁も含め、どう考えても嘘が多すぎる。にもかかわらず、最新の世論調査でも現在の内閣支持率が3割以上、調査によっては4割近くもあるというのは、一体何なのであろうか?
 経済問題、社会保障問題、防衛や外交といったもので上げている成果に比べれば、森友、加計問題のデメリットなんか取るに足りない、仮に首相自身が関わっていたとしても、海外で行われている汚職に比べれば小さなこと、と言う人もいるだろう。しかし、私はあまり小さな問題だとは思わない。しかも、ものすごい勢いで噴出している様々な問題が、全てリンクしているのを感じる。水源に墨を混ぜれば、下流の水は全て黒くなる、という理屈である。
 文書だけではなく、前川元次官の授業に関する調査など、種々雑多な問題に共通するのは、自分たちの意に添うかどうかで厳しく白黒を付け、黒にはふたをし、黒を黒だと言おうとする人に圧力を掛け、更に遠くへと投げ捨てる、という姿勢だ。内閣人事局という現首相が作った組織は、私たちのような外の人間には分からないほどの権限を持っていて、「忖度」が実質的に強制されるようになっているのだろう。しかも、原点にある首相の意思とは、憲法改正教育勅語靖国神社森友学園といったものに対する考え方に表れている復古的、非民主的なものである。安倍政権を支持するのは、そのような思想を持っている人と、金が儲かれば何をしてもいい、という人だけであろう。それがいまだに3割以上いるというのは、なんとも情けないことである。

 米英仏がシリアの化学兵器関連施設を攻撃した。日本政府は例によって「支持」を表明した。これもひどい。
 米英仏の攻撃は、国連決議に基づくものではない。現にロシアは反発している。攻撃どころか、先週、アメリカによる化学兵器についての独立調査団新設の提案すら、ロシアは拒否権を行使したわけだから、攻撃で一致できないのは明白であったはずだ。にもかかわらず、米英仏はそれを強行した。
 日本は国際紛争を武力によって解決させることを憲法で禁じている。そして、解釈によって自衛の権利のみ認めることにした。自分の国は戦争しないのに、人の国が戦争するのを支持するのは可能だ、という理屈が、私にはどうしても分からない。PKO法案を成立させようとした時も、国連主義の名の下に、その正当性を強く訴えていたはずだ。逆に言えば、国連の決議がない武力行使は不当であると認めていたことになる。しかも、シリアはあくまでも一応「内戦」である。国際紛争の武力解決が不可だとすれば、他国の内戦への介入は更に不当なものである。
 確かに、シリア政府が本当に化学兵器を使っていたとしたら、人道上絶対に許されるべきではない。化学兵器による攻撃を受けた側が弱者であるならば、武力介入をしてでも彼らを守りたくなる気持ちは分かる。しかし、そもそも政治というのはそのような純粋な「愛」によっては動いていない。化学兵器の使用が本当に客観的に証明できるのなら、国連で軍事介入容認の決議をすることが可能なはずで、それが出来ないということは、証明が出来ていないということだ。破壊した施設の写真を公開しても、それが何の証明になるわけでもないということは、イラク戦争という実績がよく物語っている。
 あるいは、シリア・アサド政権はロシアの子分だから、たとえアサドが化学兵器を使っていても、ロシアは彼をかばおうとするという見方があるかも知れない。だが、だからといってロシアが守ろうとするシリアを攻撃すれば、それは「内戦」を超えて世界大戦へと発展する危険を含む。だからこそ、常任理事国(拒否権)制度というものが作られたのではなかったか?
 「正義」のためには手段を選ばない、というのは危険な理屈である。「正義」はあくまでも当事者がそう認めたに過ぎないものだからである。しかも、アメリカにどれだけの理性が存在するか・・・少なくとも、トランプ政権になってから私は否定的だ。国際的合意を軽視して、独善的な判断で武力を行使すれば、もっともっと大きなダメージを国際社会に与えかねない。平和憲法を持つ日本が、そこに積極的に支持を表明するなど決してあってはならないことだ。