ようやく飛行機利用が問題に・・・

 昨晩の天気予報で、今日の仙台の予想最高気温は30度(真夏日)だが、湿度が40%台の前半まで下がる、と報じられていた。残念ながら、朝起きてみると湿度が下がったような気は全然しない。何より、我が家から見える太平洋が、ボーッと白っぽくかすんでいることから、80%台後半の湿度であることが想像できた。湿度が50%を切ると、海は真っ青になる。今、私の目の前の温度計は28.7度。海はかなり青みを帯びてきている。少し霞んではいるが、田代島や網地島もよく見える。湿度は60%台までは下がってきているのではないか?
 思えば、青空にもくもくと入道雲が立ち上るような、気持ちよい暑さを感じることのない夏であった。石巻猛暑日も1日もなく、仙台でも7月に1日あっただけ。その割には負担感の大きい湿った暑さが続いた。今日、娘と買い物に行きがてら、「そういえば入道雲見ていないな」などという会話をしていた。
 さて、8月20日の毎日新聞に、「温暖化 航空業界に影」という大きな記事が載った。これは、産業の温暖化への影響を取り上げた記事の中でも、少し異色の記事である。
 飛行機は二酸化炭素の排出量が鉄道の5倍なので、ヨーロッパでは飛行機に乗ることを控える運動が既に起こり、広がっているという記事である。何が異色かというと、いくら新聞とはいえども産業の一部、なかなか他の産業の足を引っ張る記事というのは書きにくい。温暖化にとって飛行機や自動車がいかに有害かなどというのは、すこし真面目にものを考えている人間なら誰にでも分かりそうなものだが、より燃費のいい自動車の開発、といった話題は記事になっても、自動車に乗ることを止めよう、みたいな記事は、皆無だったか、あったとしてもせいぜい小さなものだったからである。おそらく、日本での出来事ではないことで、少し距離を置いた他人事的な書き方ができることと、自動車に比べればまだ影響が小さい飛行機の話であること、あるいは毎日新聞社もしくは記者としての危機感から、あえて記事にしたと想像する(書いたのはブリュッセル支局の八田浩輔記者)。
 「CO₂排出量 鉄道の5倍」という小見出しには、やや問題がある。記事には、国土交通省の資料に基づいて作成したという、2017年度の「1㎞を移動した場合、1人あたりで排出する二酸化炭素の量(g)」という簡単な棒グラフが載っている。数値は次の通りだ。
自家用自動車 137g
飛行機 96g
バス 56g
鉄道 19g
 一言で「自家用自動車」と言っても、車種はバラバラだし、1台に何人が乗るかのよっても大きく違ってくる。国交省のホームページを探してみれば、確かに同じグラフが載っているのだが、その算出方法は書かれていない。しょせん目安としての平均値に過ぎないことは、このグラフを使う側でもよく心しておかねばなるまい。
 例えば、自家用自動車が飛行機の1.4倍だとしても、自家用自動車が普通は数十㎞、せいぜい数百㎞の範囲の移動にしか使われないのに対して、飛行機は少なくとも500㎞、ややもすれば数千㎞、1万数千㎞の移動に用いられる。ということは、たとえ1㎞当たりで自家用自動車の3分の2しかCO₂を出さないとしても、人数当たりの総量では自家用自動車を遥かにしのぐことになる。しかしまた、飛行機に乗る人の数は、自家用自動車に乗る人の数からすればものの数ではない。したがって、「人数当たり」ではない総量であれば、やはり自家用自動車の方が環境負荷が高い、ということになるだろう。このグラフの扱いはなかなかやっかいだ。
 ただ、いずれにしても、ヨーロッパでは飛行機使用自粛の動きがあり、それに押される形でKLM(オランダ航空)は、目的地が近い場合には鉄道の利用を呼びかけたり、不要の移動を避けるよう自社の利益に反するような提案を始めているという。かなり前から、「飛行機と自家用車を手放せなければ人類に未来はない」と言い続けている私にとっては、何を今更、という話ではあるのだが、さすがに航空会社自らともなると驚く。やっぱり、なんだかんだ言ってもヨーロッパ人偉いな。
 記事は、3分の1くらいのスペースを使って、16歳の環境活動家・グレタ・トゥーンベリさんの取り組みを紹介する。このブログでも、5月28日に少し触れたが(→こちら)、大人たちによる温暖化対策の取り組みの甘さを批判して、学校のストライキを始めたスウェーデンの女子高生である。
 その時私は、彼女の取り組みに対して懐疑的、もしくは批判的だった。確かに、環境問題の影響は若い世代ほど大きく受けるし、大人の無策ぶりは批判すべきであるとしても、「だったら、若者も含めてもう個人が自動車やバイクなんか持っちゃダメよ」と言えば、目先の利益こそが大切な大半の若者は、後先考えることなく「そんなの嫌だ」と言うに違いない。その点で彼女は若者の代表でも何でもないし、彼女自身だって、豊かな生活を手放すだけの覚悟はないのではないか?と思ったのである。
 彼女が、今年1月、ダボス会議に参加するためスイスへ行った時には、32時間かけて鉄道で移動したこと、今は、9月下旬に国連本部で開催される会議に出席するためヨットで大西洋を航海中、といったことを知るに従い、思ったよりは真面目に問題を考えているようだと見直し始めた。
 それにしても、彼女が鉄道で参加したダボス会議に、1500機のプライベートジェットが集まったというのは衝撃的な話だ。それらを使っていたのは、「世界の要人」らしい。なるほど、世の中のたいていの大人、中でも地位の高い人は忙しく、例えば日本政府の代表者が船と列車でスイスに行くのは、お金ではなく時間が許さないだろう。彼女が鉄道やヨットで移動できるのも、豊かな時間のなせる技なのだ。
 環境に優しい生活をするためには、KLMも言うように、移動そのものを減らす必要がある。人だけではなく、物もである。「物」とは輸出入のことだ。環境問題は「グローバル」である。にもかかわらず、それを克服するためには「グローバル化」という流れを逆転させなければならない。神はやっかいな仕組みを作ったものである。