レンタカー・マジック・・・四国旅行(番外)

 このブログ内では有名な話、私は自家用車・飛行機原則禁止論者である。地球環境上もさることながら、エネルギー資源の使い方の問題(使用優先度や後世との関係)として、許されるわけがないと思っている。したがって、かずら橋も元々はバスで訪ねるつもりであった。ところが、昨日も書いたとおり、バスの便が甚だ悪い。
 琴平で必要な時間が分からない以上、子どもたちが言うとおりのバスに乗れるとも限らないし、困ったなぁ、と思いながら、繰り返し時刻表のページをめくりながらため息をついていたところ、駅レンタカーのページが目に止まった。なんと、阿波池田駅にもレンタカーがあるではないか。しかも、「駅レンタカー」という窓口(店?)でレンタカーを借りると、「レール&レンタカー」という企画切符扱いとなり、全員の乗車券が2割引、特急券類が1割引になるという。石巻から高知までは遠いので、大人だと乗車券だけで15000円以上かかる。レンタカーは軽なら12時間まで5940円だ。大人2人の乗車券の割引分だけでレンタカー代を上回り、レンタカーは実質無料ということになる。もちろん、我が家は大人2人だけではないし、特急券も1人に4枚(ただし、このことに気付いた時、既に「サンライズ瀬戸」の特急券は購入済みだったので、3枚)必要だ。つまりは、レンタカーを借りると、JRに払うお金が安くなる上に、阿波池田〜かずら橋のバス代も不要となり、我が家の場合、2万円も安く付く。これを「マジック」と言わずに、他に何を「マジック」と言おうか!?いくら、自家用車廃止論者、だが実際にはできるだけ使わない主義者といえども、世間様が便利と快適とに惚けている時、自分だけがマゾヒスティックに耐乏生活をするのはバカバカしい、と言うより、家族からの強烈なバッシングにより、私の孤立が社会との関係だけでは済まなくなる(笑)。よし、ここはひとつレンタカーだ、と決意を固めた。
 ところが、時刻表11月号の巻末には、阿波池田駅駅レンタカーの営業所が書いてあるにもかかわらず、予約のネット窓口を探すとそれが見当たらない。仕方がないので、直接電話をしてみたところ、阿波池田駅の駅員さんが出て、レンタカーは10月末で営業を止めたと言われてしまった。仕方がないので、ネットで見付けた阿波池田駅近くのレンタカー屋さんで軽自動車を借りた。5200円と、駅レンタカーより安いが、JR切符の割引は発生しない。
 そこで、元々は考えてもみなかったことだが、高知駅駅レンタカーを借りることにしたのである。
(以下の5つの段落は話がマニアックかつ煩瑣なので、面倒に思う人は飛ばして最後の3段落だけを読むことをお勧めします。)
 高知駅から桂浜まではバスで35分ほどだが、運賃は片道690円。「1日券」という名前の実質往復切符を買うと、1000円。つまり、我が家の場合、桂浜を往復しただけで3500円かかる。バス時刻を調べると、桂浜を訪ねた後、ぎりぎり室戸岬の往復も可能だが、こちらは片道2690円(奈半利=なはりまで鉄道を使うと往復で500円ほど安い)。家族で往復すると、バス代はなんとびっくり2万円を超える。
 JRの運賃というのは、長距離を通しで買うほど安くなる仕組みになっているが、今回の経路について言えば、石巻から買える最長の切符は高知県窪川駅までである。更に宇和島・松山を経由して多度津まで1枚の切符で買えるかと思っていたら、窪川から若井までの一駅区間が第3セクターの土佐くろしお鉄道になっていて、JRが途切れているのである。途切れている部分を飛ばして、JRだけを繋げて1本の線として距離計算をし、最後に窪川〜若井の運賃210円の切符を足してくれればいいものを、それは規約上できないという。不合理である。しかも、土佐くろしお鉄道は、JR東日本と提携関係にないため、石巻駅では、窪川〜若井を含む切符は発券すらできないという。
 大三島に行くためには、当初からレンタカーを使うつもりでいた。ルートをできるだけ一筆書きにしようとする私が、松山を起点として、今治大三島に行くことにしたのは、家族で荷物を持って毎晩宿を変えるのが大変な上、松山〜今治の最短ルート(奥道後経由)が鉄道線路に沿っておらず、したがって違う景色を見ることができるからである。大三島に行くにはバスも船もあるにはあるが、例によってなかなか使いにくいのである。ネットで探せば、松山市内で、4000円台前半で軽自動車を貸してくれる店も見つかったが、JRの割引のことを考えると、やはり5940円の駅レンタカーの方がいい。
 そこで、駅レンタカーを予約した上で、高知駅窪川宇和島〜松山〜高松の乗車券と、26日の宇和島〜松山の特急券、28日の松山〜高松の特急券(丸亀で降りても値段が同じなので、レンタカー発券時に買う切符としてはとりあえず高松)を買おうとしたところ、28日は年末年始の多客期で、「レール&レンタカー」の割引が利かない、27日以前に発券し、有効期間が28日にかかっていても、その切符は28日に使えないという。ルールというのは本当に難しい。これらのルールを忘れることなく、厳密に守って最適の切符を発券してゆく駅の窓口職員というのはたいしたものだな、と感心した。
 予想外の展開に当惑している私を見て、親切な駅員さんが、「レール&レンタカー」の切符は大人2枚子ども1枚にして窪川〜松山で発券し、中学生は学割(「レール&レンタカー」と併用不可)で窪川〜松山〜高松、そして大人2枚については、28日でも使える松山〜高松の「トク割2枚回数券」(指定席も利用可)を使うとよいと教えてくれた。この厚意はありがたかったが、時間があれば丸亀で下りるつもりだった私としては、特急券だけではなく、乗車券もそれ以降が無効になる回数券を買うかどうかは即答できない。丸亀で特急を降りて切符を棄て、その後、高松までの乗車券を買うのと、割引のない松山〜高松の乗車券・特急券を買うのとどちらが安いかを比較しなければならないのである。そして比較の結果、回数券を買った。
 細々とした話を書いてきたが、最終的に何が言いたいかというと、石巻〜高知というような長距離の切符を買うのではなかったとしても、家族4人で移動するとなれば、レンタカーを借りた方が総額は安くなる。まして、それによって本来必要なバス代がかからなくなるとなれば、なおさらである。ちなみに、今回レンタカーを3回借り、合計で約470㎞を走って、消費したガソリンは驚きの21リットル(!!)、約3000円に過ぎない。高知駅から桂浜往復のバス代にも満たない些細な金額である。
 これは許されない話である。思えば、飛行機だって、切符だけを買うと、割引率が高く、その代わりに使い勝手の悪い早割でなければ列車よりは高くつくが、なぜか宿泊とセットにすると、たいていは新幹線を使うよりもひどく安い。環境や公共の福祉(地方交通路線の維持)への悪影響が大きいほど高くつくべきなのに、逆なのである。これは政策的に許してはならない。レンタカーや飛行機に巨額の税をかけるか、バスや鉄道に手厚い補助を出し、レンタカーや飛行機は、高くはつくけれど利便性を考えて選ばざるを得ない、という状況を作るべきなのだ。もっとも、そんな物差しは世の中のどこを探しても存在しそうにない。
 さんざん「レール&レンタカー」の世話になっておいて、あまり勝手なことを言うものではないが、やはり釈然としない私であった。