香港で知る「自由」の価値

(2020年7月31日付「学年だより」№56より①)

 ようやく明日から夏休み(だけど、まだ梅雨)。私も30年あまりの教員生活で、長くクラス担任をやり、その間、ずっとこんな「学級通信」を出し続けていたが、「7月31日」という日付で書くのは初めてだ。びっくり!!
 ところで、今月1日、中国で「香港国家安全維持法」という法律が成立した。香港で続いている反中国の民主化運動を取り締まるための法律だ(香港問題は、昨年12月2日の№28にも少し書いた→こちら)。
 知っていると思うが(嫌み?=笑)、香港は、アヘン戦争(1840年)による賠償問題で、1842年から150年以上にわたってイギリス領だった。1999年に中国に返還される際、香港の人々が思想や言論・表現の自由のない共産党支配に反発して混乱が起きること、それによって対外的なイメージが損なわれることを危惧し、中国は「1国2制度」を50年間維持すると約束した。香港は中国に属する(1国)が、イギリスと同様の自由主義的な体制を保障する(2制度)というものだ。私は返還の前にも後にも行ったことがある。中国領になった後も、香港と中国との間には「国境」があり、通貨も違う。それからわずか20年。「1国2制度」は実質的に崩壊した。
 中国語(の方言)を話し、明らかに中国文化による生活をしているにも関わらず、イギリスの植民地であった方がいいという願いは哀しい。これは、人間にとって「自由」というものがいかに大切なものであるか、ということを、よく物語っているだろう。
 自分が自由でいたいということは、他人の自由を最大限尊重するということでもある。無制限な自由は、人と人との利害対立→格差の拡大という社会問題を生む。国家権力はたいてい、自分たちの地位や利益を守るため、できるだけ国民に自由を与えたくない。みんなが常に平和で自由であるためには、それなりの努力が必要だ。今の日本では、憲法にも「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」(第12条)と書かれている。
 問題(夏休みの宿題):「努力」とは何をすることか?具体的に述べよ。

 

裏面:7月26日付日経「チャートは語る」欄、「世界むしばむ教育危機」を貼り付け。
(補:記事によれば、7月18日現在で、世界210ヶ国中、国全体で休校が107ヶ国、地域限定で休校が54ヶ国、再開が49ヶ国とのこと。もちろん、日本は「再開」に入っている。)
コメント:最近、日本全国で感染者が大きく増えている。にもかかわらず、「Go to travel」などと言っているのを見ると、1ヶ月にもわたって県内で感染者が出ていなかった5月に、なぜ休校にしなくちゃダメだったの?と思ってしまう。それでも、6月から全員がひとつの教室で勉強が出来るようになったことは、本当によかった。
 夏休みを目の前にしてそんなことを思いつつ、他の国がどうなっているかなんて考えたこともなかったが、この記事を読んでびっくり仰天!!実は、世界の半数以上の国で、まだ国全体での休校が続いているのだ。ワクチンが出来るまで(←出来るという保証もないはずだけど)休校と言っているらしいフィリピンなど、学校は年単位で休み、ということになる。その間の生徒はどうするんだろう?これらの影響は何年も経ってから表れる。どんな形で表れてくるだろうか?