水道事業の民営化

(5月11日付け「学年主任だより№5」より②)


*「スタディ・サポート」の結果返却に関する記事省略。


裏面:5月5日付け河北新報より、「『水道宮城』深まらぬ理解」を貼り付け。
平居コメント:2018年に法改正があって、水道事業の運営権を民間企業に与えることが認められるようになった。翌年、宮城県は、全国に先駆けて制度を利用することを決定した。そのため、委託(売却?管理?)の方法は「宮城型管理運営方式(略して宮城方式とも)」と呼ばれる。ところが、何しろ水は「命の源」なので、それについての批判も根強く存在する。来月の定例議会で、いよいよ水道民営化のための具体的な条例案が提案されるとあって、最近、再びマスコミで賛否について報道が見られるようになってきた。なかなか、この「学年主任だより」裏面に印刷できるサイズで、必要十分な情報を盛り込んだ記事は存在しない。それだけ大規模な制度変更だということである。この記事はあくまでも諸君が調べるきっかけだ。個人意見なので印刷しないが、5月3日に、同じく河北新報の「持論時論」欄に載った某医師の意見は、海外に関する貴重な情報をも含む優れた意見文であった。せめてそれくらいは読んでみた方がいい。諸君も間もなく主権者。今年は秋に宮城県知事選挙もある。真面目に考えて投票しないと、ずっと後になってから自分の首を絞めることになるからね。

(ブログ用の補足)
 5月3日の意見文とは、「水道みやぎ方式 経営内容県民に開示を」という見出しが付いたものである。投稿者の整形外科医Gさんは、私のちょっとした知り合いだ(←どうでもいい)。水道事業の民営化を強く批判するものであるが、Gさん自身が、宮城県で運営権の売却先が事実上決まっている以上、6月の県議会で関連議案を否決することは難しいという見通しで書いていることもあって、新聞社では、「水道の民営化を止めろ」というような見出しを避け、上のような民営化前提の見出しを付けたのだろう(「持論時論」の見出しを付けるのは、新聞社であって執筆者ではない)。Gさんは、疑問の一つとして「詳しい経営内容は公開されるのか」と述べているだけで、それを主題としているわけではない。あくまでもGさんの主張の中心は、「水は生命の源である。決して水を利益追求の手段としてはならない」ということである。
 この意見文の中で特に興味深いのは、海外の事例である。フランス・パリでは、1984年に民営化を実施したが、結局水道料金が3倍に跳ね上がり、財務状況も不透明だったため、2010年に再公営化された。イギリスでは、1979年に民営化したが、2010年会計検査院が「民営化による入札は、公共入札より40%割高」と報告したことにより、民営化は禁止された。ドイツ・ベルリンでは、2013年に水道事業を再公営化したが、その際1700億円もの資金が必要となり、全て水道料金に上乗せされた。Gさんによれば、このように一度民営化した水道事業を再公営化した事例は、世界で250件を超えるのだそうだ。
 Gさんは、最後に次のように書く。
「国連総会は10年、『清潔な水を利用する権利』を人権として認める決議をしている。その水を企業に売却し、営利行為の対象とする発想は問題である。世界の流れに逆行している。コモン(公共財)であり、人権でもある水を、われわれは取り戻さなければならない。」
 確かにその通りだ。だが、それ以前に、2018年の水道法改正にしても、「みやぎ方式」にしても、非常に分かりにくい。多くの国民・県民に、それを理解して是非を判断しろというのは無理である。民主主義は大変だ。