571億円は大きいか?

(6月2日付け「学年主任だより№8」より②)


【みんなで世の中を作る・・・選挙講話の復習と補足】

  先週水曜日に行った宮城県塩竃市の選挙管理委員会事務局による「選挙講話」、後半の聞く態度の悪さについては、その場で苦言を呈した通りだが、その割に、しかも時間も机もなかったのに、メモ、感想はよく書けていた。まずは、それらからいくつかを紹介しよう。

 

*選挙の予算は571億円もかかっていて、すべて国民の税金だということが分かった。しかし、51%しか投票しておらず、もったいないと思った。自分たちの税金を使っているのに、全く自分の意見と違う人が当選してしまったら、払っているお金が無駄だと思う。講話を聞く前は投票なんて面倒くさいと思っていたけど、投票しにいこうと思った。
*この前、私の住んでいる市でも市長選があり、兄が初めて選挙に行っていたのですが、「誰でもいい」「誰にすればいいか分からない」と言っていて、やはり難しいもんだな、と感じました。
*選挙クイズをたくさん出して下さったけれど、一つも当たらなくて、選挙について何も知らないんだな、と思いました。選挙権を持つ年になるので、しっかりとした知識を持つべきだと感じました。
*今の若者は、選挙は面倒くさいから行かない。けど、「政治家が・・・」と文句を言う人は多いと思います。今回の講話で、自分の意見を反映させるために選挙に行かなくてはならないと、改めて思いました。
*最近は、18歳などの若者の投票率が悪いというのを聞いて、なぜだろうと疑問を抱いた。これから社会を担って行くのは自分たちなわけで、政治も無関係じゃないのに、なぜ自分の意見を国に反映させようとしないのかが分からない。投票も行かないくせに、国に文句をたらたら言っている人はホントによくない。
*選挙に関してまだまだ自覚が足りないことを思い知らされました。私たち1人1人が自覚を持ち、政治への参加をして、私たちの未来を変えていきたいです。私は、他国で決められている「投票しなければ罰金」という制度を取り入れてもいい、と思いました。若者の投票率36%は、日本に住む者として情けないと思いました。

 

 ほとんどの諸君が、投票に行くという決意を述べていたのはよいが若者の投票率の低さ=政治的影響力の小ささに、今更驚かないで欲しいなぁ、と思った。昨年までの「学年だより」でも2回(→その2回目。1回目はそこにリンクが張ってある)、それについて具体的な数字を挙げて解説したのに・・・。単に高齢者の方が投票率が高いというだけではない。少子高齢化の影響で、数そのものが高齢者の方が多いので、同じ投票率では、高齢者にまったく太刀打ちできない。そんな結果の(だけではないだろうが・・・)借金1200兆円!!諸君はそんな現実をもっと真剣に直視すべきだ。
 「人を選ぶことの難しさ」に関する感想も目に付いた。誰でも口では立派なことを言う。しかし、本当に信頼できるのは、候補者が今まで何をしてきたかだが、そんな情報を集めるのにはエネルギーが要る。民主主義は大変なのだよ。また、どうしても投票したい人がいないという選挙は珍しくない。そんな場合、投票すればいかにもその人を積極的に信任したようで嫌なので、いっそ棄権あるいは白票を投じたいと思うこともある。そもそも、選挙の争点はたくさんあるので、「この点についてはAさんがいいけど、こっちの点についてはBさんの方がいい」というようなこともよく起きる。妥協や駆け引きが必要で悩ましい。
 「だったらお前が自分で立候補しろよ」というのは正論。年齢は違うが「被選挙権(=立候補する権利)」というのも存在する。だが、それを行使することはなかなかに難しい。日本は、世界でも有数の「立候補のハードルが高い国」である。それはなぜ?・・・18歳を迎えるということで「選挙権」ばかりが話題とされるが、「被選挙権」についても一度調べてみて欲しい。
 1回の国政選挙(←毎年、ではない)国政選挙にかかる571億円に驚いた人は多かったようだ。それが、それ以上節約できない金額なのかどうかはチェックが必要だが、「選挙なんか止めて別のことに使った方がいい」というのは違う。選挙には571億円以上の価値があるかも知れない。何しろ、それで当選した人たちが毎年100兆円以上のお金を動かすのだから・・・。選挙は民主主義の基礎である。その金額を惜しむよりは、むしろ、今の選挙制度(選挙区の大きさ、比例代表制、選挙運動の方法など)について考えているとよい。