歩く速さ

(6月2日付け「学年主任だより№8」より①)


 日曜日、吹奏楽部の定期演奏会に行った。私は一流も好きだが、素人も大好き。音楽せずにはいられないという純粋な衝動と、1回だけの演奏会にかけるひたむきさは魅力的だ。この日も、そんな素人音楽の魅力を堪能させてもらった。
 それはともかく、私が多賀城の文化会館に行く時は、よほどの悪天候でない限り、塩釜駅から歩いて行く。のんびり歩いて25分。石巻~塩釜の定期券を持っているというのもあるし、環境や健康にいいというのもあるが、何と言っても歩くのは楽しいのである。歩くというのは、本当にものがよく見える速さだ。しかも、何回同じ道を歩いても、不思議と発見がある。変化が欲しくなった時には少しだけ道を変えてみる。表札のデザインとか、玄関先のちょっとした植え込みとか、そんな些細なところに住んでいる人の個性が表れている。・・・それらは車に乗っていると絶対に目に入らない。
 と書いていて、なんだか先週書いた「天声人語の書き写し」の話と似てきたことに気付く。おそらく偶然ではない。電気やガソリンといったエネルギーの力を借りずに、人間が人間独自の力で情報を得たり移動したりする時、外の世界は最もしっくりと頭の中に入ってくるのだな。便利や楽がいいとは限らない。


裏面:5月21日と22日付け毎日新聞「くらしナビ」欄を貼り付け。「幸福度世界一フィンランド」というタイトルの2回連載記事で、『世界一しあわせなフィンランド人は、幸福を追い求めない』の著者フランク・マルテラ氏へのインタビュー記事。
平居コメント:縮小して少し字が小さくなってしまったが、裏面を2回も使うのはスペースがもったいないので、あえて・・・。字が小さくても大きくても、読む人は読む、読まない人は読まないだろう。さてこの記事、単なる本の紹介・宣伝ではない。回答者は、若くてもさすが哲学者。人間の生き方についての的確で深い洞察がある(と私には見える)。簡単な哲学入門として読んでみては?