女帝と問題議員

 東京都議会議員選挙が終わった。投票率の低さ(42.4%)は目を覆いたくなるほどで、その結果についてとやかく言っても仕方がないような気がしてさえくるが、少しコメントしておこう。問題は2点である。
 石井妙子『女帝小池百合子』(文藝春秋)という本が出たのは、昨年の5月のことであった。大変評判になった本であるが、本が優れていたと言うよりは、そこに描かれていた小池百合子という政治家の恐ろしさというか、貪欲さというか、計算高さというか、そういうものが話題の中心であった。私自身は読んでいないのであるが、それは、読むと非常に不愉快な、暗い気分になり、しかも彼女が都知事である以上、彼女を当選させるとか辞めさせるとかに自分は一切関わることが出来ないという無力感の不愉快が予感されたからである。
 私の感覚であれば、このような本が出れば、小池百合子の政治家としての信頼は地に落ち、二度と立ち上がれないような気がするが、その後を見ていると、一切影響などないかのようだ。そして今回の都議選も、彼女の地盤である「都民ファーストの会」が、壊滅的な敗北をするだろうと予想されつつ、蓋を開けてみれば大健闘。多くの政治記者の予想の倍にも上る議席数を獲得した。勝因の一つに、小池知事の動きがあったといわれている。どのように動いたにせよ、小池与党が勝利、とまでは言わないけれど、大健闘をしたというのは、ジャーナリズムの力の小ささを感じさせて嘆かわしい。ジャーナリズムに力がないのではない。どちらかというと、民衆の側に、ジャーナリズムを生かすだけの力がないのだ。
 大田区鈴木章浩という議員がいた。過去形である。今回の選挙で落選した。次々点で、最下位当選者との票差は約3300票。得票率7.6%であった。
 私が粘着質の執念深い性質であるかどうかは知らないが、政治家などというのは、一時だけを見ていても評価できないと思っているので、いろいろな議員の動向をなんとなく気にしている。
 鈴木元議員は、2014年にかなり下品なセクハラ・ヤジ問題を起こし、私も一文を書いた(→こちら=辞任を求める声が多く湧き起こっていたことについての反論)。調べてみると、ヤジ問題以外にも、困った問題がわんさか出てくる人であった。その時は結局、私の期待どおりに辞任せず、しかもすっかり大人しくなり、尖閣諸島上陸のような勇ましい行動を取ることはなくなったようである。遠く離れた所にいる私の視界にはほとんど入ってこなくなった。
 ヤジ問題から3年後の都議選では、前回から大きく票を落としながらも、当選を果たした。問題ありありの議員を、最下位とは言え当選させた大田区民は情けない、と言うべきか、票を減らしてお灸を据えたのだからよいと言うべきか、ヤジ問題での批判に懲りて身を正したと評価すべきなのか、私は評価に悩んだ(→その時の記事)。
 そして今回はついに落選である。これまた評価が難しい。なぜなら、その後、非常識な行動を取らなくなった鈴木元議員が落選したというのは、逆に、少々問題ある行動であったとしても、目立つことをしていた方が選挙に有利ということもあるのではないか?との思いが兆してくるからだ。
 いずれにしても、私には世の中の人々の考え方が理解できないし、都政についての情報もあまり持たないので、真相は分からない。ただ、こんなことを気にしながら結果を眺めていた、というだけ。