石油も同じこと

 先週土曜日の昼下がり、ガソリンスタンドに行った。通常は最もすいている時間帯である。ところが、6台ある給油機のそれぞれに3台ずつくらい車が並んでいる。こんな光景は初めて見た、と言ってよいほどだ。
 海の波にも、様々な波の重なり合いの偶然によって、千回に1回くらい大きな波が来ると言うではないか。それと同じ現象がたまたま起こったのだろう、と思った。セルフのスタンドなのだが、給油を終えると、従業員が緑色のチラシを手に走ってきた。「Lineに登録しているか?」と聞く。「スマホを持たない私が、そんなものに登録しているわけがないではないか」と言いかけて止めた。その従業員が、私がスマホを持っていないことを知っているわけがないし、どうでもいいことだからだ。「登録していない」と答えると、チラシを私に押しつけ、「登録しろ」と言う。続けて、「明日からガソリンを6円値上げする。そんな情報も登録していると入ってくる」と言う。ははぁ、混雑しているのは偶然ではなく、Lineに登録していて、事前に値上げ情報をGetした人が、駆け込み給油に来た結果だったのだ。私こそ、その日給油に行ったのはまったくの偶然。ある意味で幸運だった。
 1リットル当たり6円を一気に上げるというのは、なかなか大胆だな、と思ったが、何しろ先週土曜で155円。新聞などに載っている昨今のガソリン事情からすれば、かなり安い。仕方のない値上げだろう。(昨日の河北新報によれば、宮城県の24日現在のガソリン価格は、平均166円80銭で日本一安いらしい。)
 そうこうするうちに、政府が、石油高騰を抑制するために、石油元売りに補助金を出すと言い出した。1リットル当たり3.4円。重油軽油、灯油、ガソリンが対象らしい。
 例によって私は呆れる。理由はまず、政府になぜそんな金があるのか?という問題だ。借金は1000兆円を超えている。社会保障費の伸びも大きく、コロナ対策も大変だ。そんな中で、有限である以上、価格が上昇を続けるのがむしろ当たり前な石油に、なぜ補助金なんか出すのだろう?しかも、元売りに補助金を支給するということは、用途に関係なく、ということだ。暴走族を始めとする遊びの車にも、である。最低限、農漁業や、広い意味での公用車(警察、消防、ゴミ収集、公共交通機関あたり)に対象を限定すべきである。もちろん、その線引きが難しいのは分かる。支給の方法も面倒になるだろう。しかし、生存環境を守るために、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロ、2030年までに46%削減するというにするという極めて困難な目標を国際公約として宣言する一方で、急場しのぎに石油を利用しやすくするというのは理解できない。
 とにかく、昨日のコロナの話でも同じだが、目先のことしか考えられないというのは困ったものだ。