ウクライナ危機・・・そんな場合か?

 ウクライナの情勢が逼迫している。昨日、アメリカの大統領は、数日以内にロシアがウクライナへの侵攻を開始するという「強い確信」を得ていると述べた。以前、イラクに関して聞いたことがあるような言葉だ。ロシアが侵攻を開始すれば、今のところは、強い経済制裁を科すとしか言っていないが、何が始まるかは分かったものではない。
 そもそもなぜ、ウクライナという独立国に関して、アメリカとロシアがもの申したり、軍事侵攻を行うなどという物騒な話をするのであろうか?
 言うまでもなく、ウクライナはかつてソ連の一部であった。そのため、ロシアとしては、「自分たちの領土」が言いすぎであれば、少なくとも「古くからの子分」あるいは「深い関係にある仲間」という強い意識を持っている。しかも、ウクライナの一部であるクリミア半島には、ロシア海軍黒海艦隊)の基地がある。したがって、ウクライナが西側諸国との関係を強めることがあるとすれば困る、非常に不愉快だということになる。冷戦終結後、バルト三国ポーランドチェコスロバキアハンガリールーマニアといった旧東欧諸国が続々と欧米側に付いた(=NATOに加盟した)から、なおのことロシアの危機感は強い。一方、欧米は欧米で自分たちの影響力を拡大し、ロシアを弱体化させたいという思いから、ウクライナを仲間として取り込もうとする。
 ウクライナが欧米に付こうが、ロシアに付こうが、ウクライナは既に主権国家なのだから、ウクライナ国民の意思に任せればいいではないか。私なんかは、いや、おそらく私だけではない多くの人々がそう思うであろうが、少なくともロシアはそうは思っていない。それにしても、これは恐ろしく本能的な縄張り争いではないか。醜悪、といってよいほどである。
 私などは、この期に及んで何をしているのか?軍事力をちらつかせながら子分の取り合いをしている場合ではないだろ?と思う。戦争は最大の資源消費である。地球が一続きであることは、温暖化問題でも、コロナウイルスでも、おそろしくはっきりしたではないか。あと20年か30年のうちに、カーボンニュートラルを実現させなければ、人類全体が危機的状況に陥ると分かっているはずなのに、どうして軍を使っての陣取り合戦をしている余裕があろうか。あまりにも呑気だ。
 思えば、IPCCは、何年か前に見解をまとめた時、温暖化によって食糧不足が発生した場合、食糧を奪い合うための戦争が起こることを危惧していた。一見、飛躍した心配である。IPCCの見解としては越権だとの批判があってもおかしくない。だが私は、納得しながらそれを読んだ。そして、今回のウクライナ問題は、その想像が決して杞憂ではないことを暗示しているように思われる。
 人間は、人間自身の愚かさによって内部崩壊を起こす。