これは完全試合である

 昨日、中日ドラゴンズ大野雄大投手が、10回ツーアウト(9回3分の2)まで一人の走者も出さないピッチングをしていながら、その後、阪神の佐藤選手に2塁打を打たれたため、完全試合の達成を逃したということが、大きなニュースになっていた。どの報道も、2005年にも西武の西口文也投手が、楽天相手に同じような形で完全試合を逃したことに必ず触れている。
 私は変な話だな、と思う。「完全試合」を達成するためには、投手の出来が一番だが、なにしろエラーによる出塁も認められないので、チーム全体が「完全」であることが必要だ。そもそも、野球はチームプレーであって、投手一人でできることには限りがあるので、厳密に言えば、投手だけの記録というのは存在しない。しかし、完全試合がチームの記録かというと、全然そんなことはない。実際、先月、ロッテの佐々木朗希投手が完全試合を達成した時だって、報道は全て「佐々木朗希が完全試合達成!」という類いであって、「ロッテが完全試合を達成!」などという報道はひとつも見なかった。同様に、「1994年槙原寛己(巨人)以来28年ぶり!」という記事はあっても、「巨人以来28年ぶり!」という記事はなかった。どう見ても、完全試合は投手の個人記録として認知されている。
 ところが、残念ながら、9回を0点に抑えても、身方が点数を取ってくれなければ、試合は終わらない。最悪12回まで試合は続く。だから、昨夜の大野投手のように、10回まで投げた結果、完全試合を逃すということも起こってしまうのだ。
 しかし、点数を取ることができるかどうかは野手の問題である。相手投手が誰かというのも時の運だ。場合によっては、9回を27人で終えれば完全試合達成で、場合によっては完全試合にならず、一歩間違えば10回にホームランを打たれて負け投手ということもあり得る、というのは不公平に過ぎる。
 記録はできる限り公平でなければならない。「9回を一人の走者も出さずに終了する」のが完全試合であると決めて、勝負が付かなくても完全試合と記録すればいいのだ。それで、その日のその投手の価値を正当に評価しないことにもならないし、その他の問題が起きるわけでもない。昨夜の大野投手は、私の心の中では、完全試合達成なのである。