病院再編と地形図

 もはや1年半以上前、2021年9月、村井宮城県知事は突然、県内にある4つの大きな病院を再編成すると発表した。すなわち東北労災病院と日赤病院を統合して県北の富谷市に、県立がんセンターと精神医療センターを統合して県南の名取市に、それぞれ新しい病院を作る、というのである。
 私は、賛否以前の問題として、なぜ県にそんな権限があるのかが理解不能だった。それら4病院が全て県立なら理解できる。しかし、県立なのはがんセンターと精神医療センターだけで、日赤は日本赤十字社という認可法人労災病院独立行政法人が運営母体である。日赤は民間、労災病院は国立と言って、さほど大きな間違いはあるまい。
 各所から批判が噴出している。大病院を呼びたい候補自治体以外で、再編案への賛成意見はほとんど(全然?)目にしない。なぜこんなことをする必要があるのかは、説明を聞いても私には理解できない。しかし、この知事の過去の言動を思い返すととてもよく分かる。要は大きな土木工事がしたいのである。その一点をもってしても、私は賛成できない。しかも、それらの工事を行うためには、また山を切り開いたり、田畑を潰したりすることが必要になる。再編によほど合理的でやむを得ない理由がない限り、やってよいことではない。
 しかも、富谷市は鉄道が通っておらず、車でしか行けない。北部の2病院はどちらも総合病院だが、南部の2病院はがんと精神疾患の専門病院である。スタッフを大幅に入れ替えて診療科を整備しなければ、北部の総合病院とのバランスが取れない。
 さて、一見、話は全然変わる。
 しばらく前に、最近の2万5千分の一地形図について一文を書いた(→こちら)。情報の取捨選択に問題が多々あり、カラフルになったからといって、使い勝手はよくなっていない、というような話だ。その後も、眺めれば眺めるほど問題が見つかり、最近では、そのカラフルさが逆に醜悪にさえ見えるようになってきた。
 先日、「岩沼」という図幅に目を通していたところ、意外なことに気付いた。県立がんセンターも精神医療センターも記載されていないのである。県を代表する拠点病院でありながら、病院名はもとより、病院の記号さえ書かれていない。がんセンターは、隣にある高専の建物群の一部にしか見えないし、精神医療センターは、まるでアパートか何かのようだ。
 ふと頭をよぎったのは、県知事の病院再編案を受けて、知事の顔色を窺いながら、近い将来それらの病院が消えることを想定し、あらかじめ書かないことにしたのではないか、ということだ。慌てて発行年月を確認する。「平成28年5月」と書かれている。知事の再編案発表より5年以上も前だ。村井氏はその時既に10年以上宮城県知事の地位にあったとは言え、さすがに、知事が腹の中で再編案を温めていて、それを国土地理院にこっそりと流し、国土地理院が既成事実化のお先棒を担いだというのはうがち過ぎのように思う。
 とすると、困ったのはやはり2万5千分の1地形図だ。見れば見るほど、どうでもいいことは書いてあって必要なことは書かれていない。これも平和ぼけ、世の中の無能力化の表れなのであろうか・・・?おいおい、国土地理院しっかりしろよ。