今あなたが手にしている本

 宮城県のほとんどの高校では、明日、卒業式が行われる。それにあたり、卒業アルバムを始めとして、生徒会誌やら同窓会報、PTA会報、図書館報といった、数々の印刷物が配られた。そこに寄稿を依頼されるのは、主に今年来た新任教員で、私もその一人である。

 そうして書いたものを、今日明日、二日に分けて紹介しておく。ただし、このブログの読者にとっては何ら新鮮味のない文章である。まずは図書館報である『葉明報』に載ったもの。

 与えられたテーマは「石工生におすすめの1冊」だったのだが、ストレートに何かしらの本を薦めても面白くないな、と思ったので、少し策を弄した。

 

「 勉強の仕方を質問されることがよくあります。私は答えません。勉強の仕方が分からないのではなく、楽に結果(点数)が得られる方法を知りたいだけだ、ということが分かっているからです。労力と価値は常に比例します。点数は価値のごく一部でしかないし、楽に高い価値を手に入れられる方法があるなら、私が教えて欲しいくらいです。

 読書も同じ。いい本を知らないから読む気にならない、というのは嘘です。学びたいという強い気持ちがあれば、本は読まないことの方が難しい。そんな気持ちに従って手当たり次第に本を読めば、100冊に1冊くらいはすばらしい本に出会うことができます。私が折に触れて繰り返し読んできたような良書は、そうして出会ったものです。その動機やプロセスを抜きにして人から本を紹介してもらっても、得られるものは多くありません。とにかく、まずは本を手に取ること。私が『石工生にすすめたい一冊』は、今あなたが手にしている本です。」