期待の表れ

(2023年12月14日「担任のお話」№29より①)


 一昨日、戦力外通告を受けた楽天・塩見投手の引退記者会見が行われた。2010年のドラフト1位、鳴り物入りで入団した生え抜きの選手だ。しかし、12年間であげた勝ち星は46.期待が大きかっただけに、周りにとっても本人にとっても不本意だろう。
 同じ楽天に辛島という投手がいる。2008年にドラフト6位で入団した選手だ。こちらは通算で56勝をあげ、来シーズンも楽天でプレーすることが決まっている。思えば、1000本安打を達成し、主軸を打つ島内だってドラ6だし、今年セ・パ両リーグでMVPとなった阪神の村上、オリックスの山本だって、それぞれドラ5とドラ4だ。
 ドラ1とドラ6では、入団時の扱いが大きく異なる。しかし、それはあくまでも入団時のこと。入団後の成績によって、立場は容易に逆転する。ドラフトの指名順に関係なく、自分を信じて努力した者が、おそらくは多少の運もあってスタープレイヤーとなり、億単位の報酬を手にする。そうなった時、ドラフトでの下位指名はむしろ勲章だ。
 素質を見抜く名人であるはずのプロのスカウトが、日々、全国津々浦々まで足を運んで選んだ選手たちである。それでも、選手として誰が大成するかは読み切れない。そこにこそ「可能性」や「成長のロマン」がある。ドラフト下位選手の活躍は、私たちにそんなことを教えてくれる。


【伸ばせる余地が大きい・・・後期前半の成績】

 成績が出た。成績を出す時は、まず各科目の先生から成績表が出され、それを元に一覧表を作る。そのダイジェスト版を見ながら、学科(機械科)→1学年→全体と会議を行い、諸君の日常と成績について意見交換を行って決定する。
 会議で成績そのものが変更されることはまずないが、いろいろな先生によって諸君の日常生活が点検されることの価値は大きい。諸君のいい所も悪い所も先生方は本当によく見ていると思うよ・・・。
 ただ、残念ながら、M1についてあまりいい話は出ない。「勉強しない」「怠惰な欠席(欠課)が多い」「わがままで幼い」「提出物をなかなか出さない」などなどボロボロで、プラスの評価は「下位層が薄い」ということくらいかなぁ(しかし、上位層も薄くてドングリの背比べ)。
 今春、石工は仙台市外の高校としては珍しいほど受験生が集まり、入試の点数も高かった。「今年の1年生は期待できるぞ」というのが、教員内部での前評判だった。だからこそ、現状についての評価が辛口になってしまう。
 つまり、辛口の評価は「期待の表れ」であると言ってよいだろう。石工で学ぶ権利は、行使しないと義務に変わって不愉快だし、それ以前の問題として、持っている能力は使って伸ばさないと楽しくなくてもったいない。日々、スマホ片手になんとなく「面白い」「楽しい」などと言っている場合ではないのだ。
(私は、学校は教科の勉強をするための組織だと思っているので、その目的を果たそうとしない生徒にはとても冷たい。よく言われる課題だって、期限に遅れたものを受け取ったり、先生の側から「出せよ」と繰り返し催促する必要なんて全然ない、と思っている。そんなことをするから、みんなで甘えの体質から抜け出せず、年々レベルが下がるのだ。という訳で、年度末に担任の温情なんて期待できないだろうから、その点はよく分かっていてくれたまへ。)