未来を明るいものに

 卒業式も無事終了。さて、今日は生徒会誌『黎明』第55号に載ったものである。これは、新任教員としてではなく、3学年所属の人間として依頼されたものだ。頼まれた時には、「土木システム科3年の副担任として、何か書いて下さい」と言われたように記憶するが、出来上がってきた冊子を見てみると、章のタイトルは「3年間を振り返って」になっている。困った。今更どうしようもないのだが、私の原稿は全然「3年間を振り返って」いない。1年しか卒業生とは付き合っていないのだから、「3年間を振り返」ることはできなかった、と言い訳するしかない。題は今日の記事のタイトルと同じ。

 

「残念ながら、皆さんに明るい未来はありません。
 今の世の中で最大の問題は温暖化です。科学者たちの予想によれば、温暖化は単に気温が上がるというだけの問題ではありません。気象が凶暴化し、深刻な災害や食糧不足が発生することこそが問題です。
 ただ、私が将来に悲観的なのは、温暖化が既に進行しているからではなく、そのような状態を前にしながら、人々に危機感がまるでないからです。温暖化は政治家や科学者が解決してくれる問題であって、自分の生活とは無関係とでも考えているかのように、人々は際限のない消費、浪費の生活を続けています。
 ローマ帝国を代表する名君カエサルは、『人は見たいと思う現実しか見ない』という言葉を残しました。聖書には、イエスの処刑を求めて、『その責任が我々と我々の子孫の上に降りかかって来てもかまわない』と叫ぶ群衆の姿が記録されています。今も昔も人間は、自分にとって都合の悪い現実から目を背け、将来のことなど何も考えずに生きているようです。
 長期的な視野に立って考え、人間の弱点を見極め乗り越えていく、そんな能力を身につけるために勉強はするものだ、と私は考えています。『明るい未来はない』は失言。正しくは、『未来を明るいものにできるかどうかは、皆さんの学びと意識とにかかっている』です。ぜひ、未来を明るいものに変えてください。」

 

 また、同誌巻末に全教職員が書く「職員から卒業生へ」という2行メッセージには、上の延長線上のような話で、次のように書いた。

 

「現在の利益と将来の利益は矛盾します。『楽』と『便利』を疑い、50年後に向けて生きて下さい。」

 

 まぁ、「何言ってんの?このおっさん。また、わけの分かんないこと言って・・・」でおしまい。影響力もない代わりに害もない。