昨日は、陸前原ノ町のパトナホールに、昴21弦楽四重奏団+小井土文哉の演奏を聴きに行った。主催者であるゾンタクラブ(「女性と少女のためのより良い世界を築く」ことを目標として活動する団体)に所属する某女医さんからチケットをいただいたのである。
小井土文哉というピアニストは、2年ほど前に仙台フィルの定期演奏会で初めて聴いた(ブラームスの第2番→その時の記事)。技術的に確かで、音楽の全体像を大変的確に捉えた演奏をする優れたピアニストだと思った。音そのものにも音楽の表情にも若々しさを感じて、その点でも好感度が高かった。
昴21弦楽四重奏団とは、NHK交響楽団第2バイオリンの首席奏者・三又治彦氏ほか、国内のオーケストラの首席級演奏者による弦楽四重奏団だ。私は今回チケットをいただくまで知らなかった。ついでに言えば、三又氏(N響の演奏会録画を見ていると、独特の風貌で目立っていますね、この人)が仙台出身ということも。
前半は各自が1曲ずつ(ピアノだけ2曲)ソロを弾き、最後に弦楽四重奏というもの。具体的には、
W・クロール「バンジョーとフィドル」(三又治彦Vn)
E・エルガー「愛の挨拶」(生野正樹Va)
F・クライスラー「中国の太鼓」(佐久間聡一Vn)
C・サン・サーンス「白鳥」(玉川克Vc)
F・ショパン 「エチュード」作品25の5(小井土文哉Pf)
A・スクリャービン ピアノソナタ第4番(同)
A・ドボルザーク 弦楽四重奏曲「アメリカ」第4楽章
後半は、5人でドボルザークのピアノ五重奏曲第2番イ長調
そしてアンコールはピアノソロでシューマンの「トロイメライ」
これを見れば分かるとおり、何しろピアノは「アメリカ」以外全てに登場した上、五重奏のアンコールもピアノソロなのだから、小井土文哉の売れっ子ぶりを意識してか、小井土文哉の演奏会に昴21が賛助出演した、という趣であった。
前半のお話もまずまず楽しく、小規模な響きのいいホールで名人たちのいい演奏を、安心して聴けた。特に三又氏のクロールは好演!
一緒に行った老先生と、石巻に着いてから酒を飲みに行った。その時既に22:30。しかも木曜日。決して小さくはない店だったのに、入ったら「カウンターしか空いていないんですけど・・・」と言われた。もちろん、私たちはそれで一向にかまわないのだが、コロナ明けということなのか、それだけの人が町に飲みに出ているというのが驚きだった。
今日は、教科研究会というのがあって、また仙台に行った。私学を含む県内の高校の国語教育の元締め団体である。形通りの総会が終わると、恒例の講演会である。今年の講師は、宮城教育大学准教授・佐野幹(さの みき)氏。
実はこの方、このブログの記事に大々的に登場したことがある。2013年10月のことだ。氏がこの年の8月に上梓した『「山月記」はなぜ国民教材になったのか』(大修館書店)について、5回にわたって批判的に論じたものである(→こちら=第1回)。結論は、「学問は現実に力を持たない」である。つまり、机上の空論だ、ということだ。
その著者が、今、地元の大学にいるとは知らなかった。あの本を書いた人はどんな人なのか?半分好奇心もあって、直接話が聞けることをけっこう楽しみにしていた。
ところが、結局私は半分以上寝ていた。前夜、日付が変わる直前まで酒を飲んでいたから、では決してない。「新学習指導要領を受けて中学校との接続をどのようにすすめればよいのか」という演題を見れば分かることだが、学習指導要領を絶対視し、それに合うように物事をこじつけていく、やはり御用学者なのだ。もちろん、完全に公的な団体による講演会なので、そのような人しか呼ばないことは分かっていたつもりだったが、それにしてもつまらなかった。100分予定の講演が70分あまりで終わってくれたのが幸いだった。こういう人が「専門家」として評価されていく世の中が、私には遠い。