恥ずかしい国際卓越研究大学

 昨日帰宅したら、レターパックが届いていた。友人H君からで、内容物に「CD not for sale」と書いてある。何だろう?と思って開けてみると、トヨタ・マスタープレイヤーズ・ウィーン(→この団体について)の未開封CDだ。
 2000年4月27日に札幌コンサートホールで録音したもので、彼らの演奏会用前奏「イントラーダ」(モーツァルト交響曲第39番をU・タイマーがアレンジした2分弱の曲)、モーツァルトクラリネット協奏曲(独奏:P・シュミードル)、交響曲第41番「ジュピター」が収められている。H君によれば、プログラムにシールが貼ってあった人(=当たり)に配ったものらしい。H君がどうやってこれを入手したのかは知らない。
 トヨタ・マスタープレイヤーズ皆勤賞の私は、この録音の3日後に仙台で同じプログラムを聴いた。録音時間の都合で、CDではモーツァルト交響曲第29番が割愛されている。私が大好きな曲で、しかもこの室内オーケストラの美点が最もよく発揮される曲だったので、少し残念だ。
 それはともかく、聴いてみると、確かに素晴らしい。だが、あの名人集団が作り出すふわっとした柔らかい響きは、CDでは今ひとつ伝わってこない。もう少し規模の大きなオーケストラが演奏した録音と同じように聞こえるのだ。 
 思えば、歌舞伎で耳にするあの心地よい三味線の響きは、録音では再現できない。チェンバロも録音だとイマイチだ。デリケートな楽器ほど、録音ではそのデリカシーが表現しにくい、ということなのだろう。

 ところで、金曜日には、国際卓越研究大学の認定候補校が発表された。6月末に3校に絞り込まれていた中から、大方の予想を裏切って東大と京大が落選し、東北大学一校だけが選ばれた。卒業生として誇らしい、などとは全然思わない。7月1日の記事(→こちら)で危惧したことが、そのまま現実化している感じがする。
 決定過程について最も詳しく書いてあった昨日の朝日新聞は、「トップのリーダーシップで一斉に変革ができるかどうかで合否が決まった。どのように研究力を強化するか、という点はほとんど審査では問われなかった」という東大幹部の言葉を引く。
 また、編集委員の増谷文生氏は、「制度の目的は、世界と互角に競える研究大学を育てることだ。だが、今回の審査結果を見ると、政府が求める大学改革手法を『押し売り』しているように見える。(中略)この制度は、(中略)大学を一つの形に押し込む傾向が強い。(中略)選に漏れた大学の幹部によると、『押し売り』にうんざりし、学内では『大学ファンドはもうやめよう』との声も上がっている」と書く。
 つまり、それなりに研究実績にある大学で、かつ、最も「上意下達」体制を徹底できる大学、ということで選ばれたのが東北大学だ、ということらしい。東北大学は政府の意のままに動く大学としてお墨付きを得た、と言い換えることも可能かも知れない。だとしたら、実に恥ずかしい。
 文科省は来年度、第2回目の募集をするらしい。本当は、東大や京大が応募しなければいいのだ。それらの大学は、「国際卓越研究大学」などという冠がなくても、受験生が減ることのない大学だ。そんな大学こそ、「押し売りからものなんか買ってられるか」と笑い飛ばして欲しいものだ。
 だが、そんなことをしたら・・・単に卓越大の認定を受けられなくなるだけでなく、本来もらえるはずの運営交付金を削られたり、学長の人選にあの手この手で口を挟まれたり、嫌がらせのような仕打ちを受けることになるんだろうなぁ。権力は本当に愚かでいやらしい。