ドラフト外入団への夢



 日本シリーズが今やたけなわである。私は別にどちらのファンというのでもないのだが、野球は好きなので、何となく気になり、時折テレビのスイッチを入れたり、新聞を丁寧に読んだりという程度のことはする。

 夢があっていいなぁ、と思う。というのは、横浜の打線がなかなか好調であるが、その中心にいる石井琢郎、鈴木尚典といった選手が、例えば石井はドラフト外、鈴木もドラフト4位の入団なのだ。ドラフト会議は諸君も知る通り、1球団に6名まで指名の権利がある。必ずしも全球団が6人指名するわけではないから、一概には言えないが、単純に考えてみて、プロのスカウトがあらゆる観点から多くの選手の将来的な可能性を評価し、判断した結果、石井はその年のベスト72から漏れた選手、鈴木もようやくベスト48に入るに過ぎなかったことが分かる。それから数年、二人は今や首位打者盗塁王で、年に億単位の金を稼ぐ堂々のスタープレーヤーである。

 人間の将来的な可能性とは、何と予測し難いものか、と感慨を抱かない訳にはいかない。現状がどうであっても、周りが自分をどのように評価しようとも、私達は常に、数年後にとんでもなく伸びている可能性を信じることが出来る。テレビの画面の中の石井や鈴木の姿は、その象徴として輝いている。