出すぎた杭は打たれない



 新年明けましておめでとう。皆元気に正月を過ごしたと思う。まずはよかった。

 年末年始、私は火事と人付き合いとに時間を取られることが多かったが、せっかくの休暇だからと、いつもよりは多くの本に目を通すことは怠らなかった。この正月に印象に残った本は2冊である。一つは中川智子『びっくり』、もう一つは小林カツ代『日曜日のキッチン』。

 この2冊は共通点がある。どちらも著者が関西出身のおばさんであるということ、どちらも自伝、もしくは自伝的なノンフィクションであるという点である。中川は社民党の代議士、小林は高名な料理研究家であるが、彼女たちの生きることにおける底抜けのパワーには舌を巻いた。とにかく元気である。何でも、やりたいと思ったこと、やる必要があると思ったことはすぐ実行。体を動かせば道は開けるし、そこには必ず満足や感動が生まれる。彼女たちがアクティブであることによって世界は余り変化しないけれど、彼女たちにとっての世界は確実に素晴らしいものになっていったに違いない。受け身である人間、じっと動かない人間には、その素晴らしさが分からないのだろう。暗い世相に責任を押しつけてブツブツ言っていてはいかんなぁ、世の中がつまらないとすれば、それは自分がつまらない人間だということなのだな、今年は自分の問題意識に従って昨年よりは少しでも行動的になりたいなぁ、そんな勇気(意欲)をもらったような気がする。

 「出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれない。出ない杭は腐る」(中川)は蓋し名言である。