戦争を防ぐもの



 8月6日は広島の、9日は長崎の原爆忌で、15日は終戦記念日であった(常識)。そこで、8月には毎年、テレビや新聞で太平洋戦争についての多様な特集が組まれる。私も現代日本の出発点を確かめるという作業にはとても大きな意義を感じるので、右から左まで出来るだけ多くの言論に接し、歴史を問い直し、今を考える努力を自分なりにしているつもりである。

 今年の夏は、雑多な論説に目を通す以外に、友人との会話に触発されて、十数年ぶりに五味川純平の『人間の条件』(戦争末期の満州を舞台にした長編小説。私は名作だと思っている。長大な映画にもなった)を丁寧に読み直したり、『この子たちの夏』という原爆体験者の手記による朗読劇の公演(8/2多賀城)に主催者の一人として関わったりした。噂に聞いていた映画『ホタル』を見る機会もあった(舞台となった鹿児島県の知覧町は7年前に訪ねたことがある)。

 『人間の条件』は少し違うが、『この子たちの夏』や『ホタル』は、戦争体験の継承を目的とする。つまり、戦争の悲惨さや不条理を語り伝えることによって、日本が再び戦争をしないように、と訴えているのである。このような運動は、他にもたくさんある。

 私は、そのような作業は大切だと思うので、自分でも多少の手間暇を費やしてみたりもするのだけれど、一方、そんなことで日本が戦争を再びせずに済むとは全然思っていない。戦争の悲惨さなど、現在戦争をしている、例えばパレスチナの人々は知りすぎるほど知っているだろうし、戦争の終結を心から願っているだろう。それでも戦争は起こり、止められない。この現実は重い。

 私は、戦争(のみならず、この世の社会的な不幸というもの全て)を避けるための方法は、日々の勉強だと思っている。つまり、いかにして情報を正確にインプットし、それについて主体的に掘り下げて考え、真実を見極め、発信するか、ということである。私達が日々取り組んでいる「勉強」というのは、大学入試のためでも、単純な喜びのためでもなく、究極はそうして社会正義を実現させるためのものなのだと思う。