大学時代の豊かな時間



 週末は、山岳部の諸君と山へ行っていた。仙台西郊の大東岳(1365.8m)である。もともと「新歓山行」として企画したのだが、1年生が一人も入らなかったので(涙)、急遽「新歓」の看板を下ろし、通常の月例山行として実施した。何ともショボイ話である。「何となく」若しくは「仕方なく」の雰囲気満々で土曜日の11時に歩き始めた。引率者としては、疲れるお勤めである。

 ところが、天気は実にいい。歩き始めて1時間の所で、本当に久しぶりでカモシカに出会い、これでだんだん雰囲気が盛り上がり始め、例年にない大量の雪で、通常の2倍の時間がかかったにもかかわらず、宿泊地である樋の沢に着いた時には、なかなかのご機嫌となっていた。

 私の他には大人が3人いた。「新入部員」見たさに参加を申し出たOB会のおじさん達である。もちろん、目当ての新入部員がいないので、失望の色は隠せなかったが、まぁ、夜になって飲み始めると、ご機嫌も直り、いろいろな山の話に花が咲いた。その中で、今までどれくらいの日数山に入ったかという話になった時、私以外の3人は、皆、最も山によく行ったのはやはり大学生の頃で、年に100〜140日だろう、ということだった。私は当時、そんな日数は山に行っていなかったが、その代わり(?)延べで1年余りは海外をうろうろしていた。いずれにしても、大学生だからこそ、そんな贅沢な時間の使い方が許されたのだし、それを通して得たものの大きさは筆舌に尽くしがたい、というのが4人の一致した見解であった。今諸君にこんなことを言っても仕方がないのだが、大学に入ったら、「頑張らないといい会社に入れない」などというアホな脅迫観念にとらわれず、自由に、悪く言えば好き勝手なことをしながら、主体的に考え、賢くなって欲しいものだ、と思う。学校から与えられた課題を、いくら誠実・丁寧にこなしても、「自発能動」の精神がなければ、人は賢くならないからね・・・。そんなことも含めて、夜の雑談はグダグダと続いた。

 日曜日も好天。傾斜40度近い、半分凍った雪の斜面を、息を切らしながら登り切ると、正に絶景!雪面を駆け下り、カタクリの花の大群落を見ると、誰の心も、今日は新入部員のいない寂しい「新歓山行」ではなく、素晴らしき2004年度最後の山行だと思うことにしよう・・・となっていた。とりあえず、めでたしめでたし。